第4話 幼馴染みとの再会 1
◇ 結城 誠 Side ◇
幼馴染だった俺たちは男女の幼馴染にありがちな、中学・高校時代に疎遠になるということもなく、でももうひとつありがちな男女の関係になる、ということもなく大学まで腐れ縁が続いていた。
お互い憎からず想っていたとは思う……それでもやはりもう一歩踏み出せなかったのは、幼馴染という関係のせいだろう。
お互いに彼女・彼氏が出来てもその関係性のまま、付かず離れずのぬるま湯のように付き合っていた。
その関係が終わったのはある意味俺のせいでもあるだろう。同じ学部の2年先輩である東先輩を紹介したのは俺だから……
紹介から一月ほど経った頃、東先輩と真希が付き合うようになった。
「ごめんね、東さんに告白されたから、これからは誠とはふたりでは会えない……」
今までもこいつに彼氏ができたことは何度か有ったが、こんなふうに会うことを面と向かって拒絶されたことはなかった。
多分、真希なりに将来のことなどを考えて東先輩をパートナーに選んだのだろう。
実際、2年後ふたりは結婚をした。
結婚前はそれでも東先輩を交えたり、他の友達と複数人となら会ってたりしていた。それが結婚後はぱったり会わなくなった。
つまりもう俺とは会わないということなのだろうと理解していたのだが……
さっきの真希からの電話……はっきり言って最初は腹がたった。
そんな経緯で疎遠になったのに、いきなり連絡を取ってきてなんのつもりなのかと。
ただ、話を聞いてみると厄介事の匂いはプンプンするし、真希は微妙に高圧的になってるし(真希はテンパると高圧的になる癖がある)そうなると真希が頼れるのは俺しか居ない……
「会わないわけには行かねぇよなー。嫌だけど……」
心の底から嫌だけど、疎遠になったとはいえ幼馴染みの頼みだ仕方ない。
「結城くん、なにか良いことあった?」
「なんの事ですか?花沢さん」
顔なじみの花沢さんがからかうように、
「いや〜ね、すっごい顔がニヤニヤしてたわよ?オンナ絡みでしょう?私という女がいながらひどいわ!」
「いやだな花沢さん、俺にはお前だけさ!」
「キャーかっこいいわよ結城くん!」
ちなみに花沢さんは、もうすぐ定年退職を迎える掃除のお姉さんである(おばさんと言ったらキレられた)。社長の入社当時を知ってる人で、ある意味で社長も頭が上がらない人でもある。
朗らかで誰からも愛されている人で、退職時は全社あげて送別会を開くことが決定している重鎮である。
俺も入社当時からお世話になっていて、こうやってよく軽口を叩き合っている。
「目の錯覚ですよ、ニヤニヤなんかしてませんから」
「あらあら、歳が遂に目に来たかねぇ?そりゃあもう嬉しそうにニヤニヤしてたように見えたのに」
「気の所為ですよ、それよりもうすぐ退職ですね?」
話を強引に変えてみた、でもこのお姉さんに通用するかな?
「そうなのよ〜、有給消化があるから出社は来週いっぱいね。有給なんて別に要らないのにね〜田代くんが絶対取れってうるさいのよ……」
今回は話に乗ってくれた。ちなみに田代くんとは専務のことである……
「私の退職までに、結城くんのお嫁さんを見繕ってあげたかったのに。それだけが心残りだわ〜」
「俺も花沢さんに花婿姿を見せたかったですよー」
「そう?ならいっそのこと私と結婚するかい?」
「それもいいですねー。ン……コホン、俺と一緒にならないか?」
イケボでプロポーズするも、
「嬉しい!でもゴメンナサイ、死んだ亭主に操をたててるの……」
「ありゃフラレたか〜。さてと、もう昼休みも終わるのでデスクに戻ります」
「あいよ、頑張んなさい若人よ」
午後からの業務はやけに捗った……
◇◆◇◆
お読みいただきありがとうございます。
1話ほぼまるまる説明回です。
あと主人公ってなんだっけ?
花沢さんは書いてて好きでした。
タイミング合えばまた出てほしいです。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
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