第12話

「君はあの瞬間、肉体の限界だけでなく人の限界を超えたのさ。

 そうだね、君が認識しやすい言い方をすると、悟りを開いた、なんて言い方がわかりやすいかな?

 まあそんなわけでね、ある程度コミュニケーションが取れる状態かつ、悟りを開く、そんな二つの条件が合わさった時、我々はこうして出て来れるんだ。」



 何かはそんな風に話し終えると、彼が理解し、どんな答えを出すのか静かに待った。



「ああ、他のダンジョンも、最奥はここだよ。

 途中の道はそれぞれ違っても、どこのダンジョンに潜っても最後はここに辿り着くようになっているんだ。」



 思考を読める何かは、彼が疑問に思ったことに対してすぐに答えをくれた。



「ただ強さという点では、まだまだ成長の余地はあるよ。

 確かに人類の中では最強と言えるだろうけどね、我々からしたらまだ赤子のようなもの。

 悟りを開いたと言っても何万分、何億分の一という確率を一瞬だけ引いただけだ。

 せめてそれを意識的に、どんな状態でも可能としてくれないと、我々にとっては脅威とは言えない。」



 彼はそう言われ、ゆっくり思考し、答えを出した。



「ふふ、やっぱりそれを選ぶよね。

 ようこそ、我々の同胞が生まれるのは何億年ぶりかな、とても嬉しいことだ。」

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