第11話
「ああ、こちらは思考を読めるからね、どれを選ぶか考えてくれればそれで大丈夫だよ。」
何かはさらに話し続ける。
「とりあえず、君の前に現れた理由でも教えるからさ、聞きながらでもどれを選ぶか吟味していてよ。」
彼は回らない思考でゆっくりと何かの話すことを咀嚼していく。
「ここはね、ほんとにただ広いだけの空間なんだ。
どれだけ歩こうが果てなんてなくて、どれだけの距離移動しようが、終わりなんて無い空間。
我々が現れる条件もこの空間のどこに行くかではなく、君がその条件を満たしたかどうかで決まる。」
「せっかくだし、条件も教えようか。
まず一つ目の条件は我々を認識し、コミュニケーションを取れる程度には精神がまともであること。
君にはそこまで大したことではなかったのかもしれないけどね、ここにくるまでにいた真っ暗な空間、君たちの認識する時間で換算すると、およそ一年ほど君はあの空間にいたんだ。
ある程度鍛えてる者でもね、五感を失った状態でただ存在するというのは、君が思う以上に精神を壊していくんだ。」
何かは彼でもなんとか咀嚼しきれるペースで、ゆっくりと話していく。
「そしてその後はこの真っ白な空間。
君は強靭な精神力で歩き続けたね、肉体の限界を超え、一歩も歩けなくなるまで歩き続ける。
我々にとっても驚嘆に値するよ。
そんな限界を超えた瞬間、二つ目の条件がたまたまだと思うけどね、達成されたんだ。
君の肉体、精神、細胞の一つ一つまでがただダンジョンの奥を見たいという気持ちで統一された。
肉体も精神も、案外自分が思うほど自由じゃなくてね、死ぬ間際だってリラックスしてる時だって、細胞の一つ一つというほどの肉体制御はおよそ不可能だし、精神にだって、常にノイズは走っている。」
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