第10話

 真っ白な空間を当てもなく歩いていく。


 昼も夜も無い空間を探索者として鍛え上げられた体力で歩いている為、どれほどの時間歩いているのか彼はわからなくなっていた。


 彼はただダンジョンの底を見たいという強迫観念や執念と呼ぶべき気持ちだけを糧に歩き続けた。


 ほぼ休むことなく歩き続け、彼の肉体が限界を超え膝をついた時、それは目の前に現れた。



「ようこそ、よくここまで辿り着いたね。」



 ぼやけた視界の先には光を纏った人型の何かがいた。


 その人型の何かは、音ではなくテレパシーのようなものでこちらに語りかけてきた。



「こここそが君たちがダンジョンと呼ぶ物の最奥だ。

 こここそが君の終着点だ。」



 何かは彼の応答を待たずに話し続ける。



「君には3つの選択肢が与えられる。

 1つはダンジョンの入り口に転移させられ、無事にここから出ること。

 1つはここでこのまま朽ち果てること。

 1つは我々の同胞となり、君たち人類から見れば神のような存在へと進化すること。」



 彼の体は限界を超えており、返事をすることもその選択肢に反応することさえできない。

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