第6話

 それからの毎日は彼にとってとても充実した日々であった。


 様々な事情でダンジョンに潜れない日も確かにあったが、彼はほぼ毎日、取り憑かれたかのようにダンジョンに潜り、モンスターと闘い、心を満たし、技を磨き、体を鍛えていった。


 彼の青春はダンジョンと共にあり、毎日が矢のように過ぎ去り、気付けば彼の探索者歴も5年を過ぎていた。


 普通の探索者はダンジョン探索から戻ると数日は空け心と体を休めるが、彼は毎日ダンジョンに潜り、ソロであるにも関わらず何日もダンジョンから出ないことも多かった。


 20代に突入する頃には彼はほとんどダンジョンから出てこなくなっていた。


 たまにダンジョンから出てきたかと思えば大量の高純度魔石や深層モンスターの素材を納品し、それによって手にした金銭で大量の物資を買い込み、またダンジョンに潜って行く。


 たまにしか見られない彼は組合内でも注目され、有名な探索者チームや企業から常に狙われ、出てきた時にはかなりの勧誘合戦が行われる。


 だが彼は他の探索者と足並みを揃えることは苦手であったし、より深く、より強いモンスターと闘うことを目的としていたため企業の勧誘にも一切惹かれることはなかった。


 彼は勧誘時等にソロでの探索には限界があるとよく言われていたが、彼はダンジョン内でできないことはないと思っており、その心情通りに己を鍛え続け、万能とは言えないまでも探索に必要な技量や知識を貪欲に吸収し、ソロでの探索を可能にしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る