第11話
週末のキャンプに向けて、俺たち4人は大学近くのショッピングモールへと足を運んだ。
必要なのはキャンプ用の服とレンタルできない備品だ。
「じゃあ俺と刀司が備品、瀬奈と琥珀先輩は服の方って感じで」
「えーっ!みんなで行こうよー!」
「でも俺は服とか興味無いですよ?」
「右に同じく、だな」
「しょうがないなぁ…じゃあ瀬奈ちゃん!一緒に服見に行こっか!」
「分かりました!悠ちゃん、また後でね!」
「おう」
軽く手を振ってから、瀬奈と琥珀先輩は服屋の方へと走っていった。女子組がオシャレしたがる気持ちを無視するつもりは無い。むしろ楽しんで欲しいからこそ、面倒事は俺たちがやるべきだ。
「さてと、俺たちも行こうぜ」
「だな。ところで悠、何をどこで買うのかは決めているのか?」
「……検索を頼む」
「相変わらず無計画だな、お前は」
俺の行動を先読みしていた刀司は、既に買い揃えるべき物をスマホでリストアップしていた。
しかも何が必要かだけでなく、どこの店で買えるのかまで網羅していた。
「さすがだな!」
「こういうことは僕に任せておけ」
刀司の作ったリストを見ながら、俺たちも店を回り始めた。
買い物は順調に進み、気付けばリストにあった物もほとんどが揃っていた。
「凄ぇな刀司…完璧じゃねぇか!」
「当然だ。買える物は全て揃えたし…そろそろ先輩たちと合流するか」
「おう!」
買い揃えたキャンプ道具を担いで、瀬奈たちがいる服屋へと向かう。
「そう言えば聞きたいことがあったな」
「俺に?何を?」
「山野辺嬢と暮らしているらしいが…手は出したのか?」
「ぶはっ!」
いきなり何を言ってんだコイツは!?
「出すわけないだろ!」
「そうか…てっきりもう付き合ってるものかと思ったが…」
「俺と瀬奈はそういう関係じゃねぇって前にも言っただろうが!」
「前から気になっていたんだが、お前たちはいつ頃から知り合いなんだ?」
「えっ?それは…いつだったかな…」
瀬奈と出会いなんて、正直覚えていない。
物心が付いた時には既に瀬奈と一緒に遊んでいた気がする。そのくらい長い付き合いだ。
「強いて言うなら生まれた時から…か?」
「随分とアバウトだな」
「仕方ねぇだろ!本当に覚えてねぇし…」
「幼い頃から一緒に居る…案外そういう関係の方が進展は難しそうだな」
「どういう意味だよそれ…」
「言葉通りだ。近すぎると相手のことが見えなくなる。山野辺嬢の特徴とお前の好みが一致するか検討してみるのはどうだ?」
「そんなことしても無駄だと思うけどな…」
まぁ余興としてやって見るとは悪くないかもな。
俺の好みの女性は、愛嬌があって頑張り屋な性格だといいな。身長は小さめが好きで、天然っぽさが少し入ってると良いな──
「…あれ?」
瀬奈は家事が得意で、事ある毎に笑顔を見せてくれる。この前も俺の好きな料理をわざわざ調べて作ってくれて、下手な演技に簡単に騙される天然さもある…
身長小さめだし…これってまさか…!
「嘘だろ…!俺の理想の女性って…!」
「ふっ、その反応は…どうやらようやく気付いたようだな」
「いや!いやいやいや!お前が変な事を言うから意識しちゃっただけだから!」
「なら本人を見ても同じことが言えるか?」
刀司の視線の先には、ちょうど服屋から出てきた瀬奈の姿があった。大きめな袋を両手に持ち、満面の笑みを浮かべている。
「あっ!悠ちゃん!」
俺を見つけた瀬奈が、パタパタと走って近付いてくる。
やめろ瀬奈…!今はそういう事をするんじゃない…!
「よ、よぉ!良い服は買えたか?」
「うん!琥珀先輩に色々教えて貰って、ちゃんとキャンプ用に可愛いの用意できたの!」
「そ、そうか!そりゃあ良かった…」
「悠ちゃん?どうしたの?」
「なんでもない!」
瀬奈が心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。上目遣いで見てくるその顔は(本人は無意識だろうけど)愛嬌全開だ。
「おやおやおや…?ちょいちょい刀司くんや、悠くんに何があったのかな?」
「僕には分かりませんが、どうやら彼の中で大きな変化があったみたいですねぇ…」
「おいそこの2人!変な事を言うな!!」
元はと言えば刀司が変なことを言うからだ!でなければこんなに意識することも無かったのに!
「本当に大丈夫?熱とかあるんじゃ…」
「だ、大丈夫だ!ピンピンしてるから!」
「そう?でも辛かったらいつでも言ってね!私ならいくら頼っても大丈夫だから!」
「あ、あぁ…ありがとう…」
「どういたしまして!」
その後も心配なのか、瀬奈はずっと俺の傍を離れなかった。
瀬奈が近くにいるだけで、俺の鼓動が早くなる。
間違いない。俺はどうやら……
瀬奈に惚れているらしい
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