第10話

 合コンから3日後、俺と瀬奈は琥珀先輩からの呼び出しに応えてサークル部屋へとやってきた。


「重大発表ってなんだろうね!」

「新しいゲーム買ったとかじゃないか?」


 道中、瀬奈と何度も要件について予想しあった。やれ新作ゲームを買ったかも、臨時収入が入ったかもと、好き勝手に予想したものだ。


「うぃーす」

「…やあ悠…おはよう…」

「うおっ!」


 サークル部屋に入って早々、満身創痍な刀司が出迎えた。かなり疲弊しており、這って動く姿はまるでゾンビのようだ。


「どうしたんだよお前」

「ちょっと実験をしてみたんだ…二日酔い中にもう1度酔ったらどうなるのかと…そしたら普通に気持ち悪さが長引くだけだった…」

「何一つ理解できないがお前がバカだと言うことだけは理解できた」

「ふっ、そう褒めるな」

「褒めてないと思うけど…」


 瀬奈ですら困惑しているあたり、刀司の常識外れ感は本物だ。

 というかどういう思考回路してたら、二日酔いの気持ち悪さを酔いで相殺できると思うんだ?


「そういや刀司は琥珀先輩の重大発表、アレなんだと思う?」

「なんだそれは」

「えっ?グループLINEに来てたけど…」

「見てないな。僕は昨日からここで寝てたし」


 マジかコイツ…家にすら帰ってなかったのか…

 確かによく見てみると、刀司の倒れていた周りにはビールの空き缶が数本転がっている。どうやら本当にここで酒盛りしていたようだ。


「おはよう皆の衆!揃ってるみたいだね!」

「おはようございます、琥珀先輩」


 俺たちを呼び出した張本人である琥珀先輩がやって来た。彼女の表情は明るく、暗いニュースを持っていないことはすぐにわかった。


「それで先輩、重大発表って何ですか?」

「フッフッフっ…聞いて驚け!キャンプに行くことになったんだ!」

「「「キャンプ??」」」

「そう!キャンプ!バイト先でキャンプ場の割引券を貰ってね。せっかくだし皆で行こうよ!」


 そう言って琥珀先輩は4枚のチケットを出てきた。有名なキャンプ場の割引券らしく、チケットには『設備貸し出し無料』とも書かれていた。


「俺は構いませんよ。瀬奈と刀司は?」

「もちろん私も行きます!」

「僕も是非」

「さっすがアタシの後輩たちだ!よぉーし、今日は日程を決めるぞー!」

「「「おー!」」」




 ∵─∵─∵─∵─∵─∵─∵─∵─∵─∵─∵




 その後、俺たちはキャンプについての打ち合わせをした。幸いにも予定の合う日はすぐに見つかり、今週末キャンプに行くことになった。


「さて!あとは持ち物だね!」

「基本的な道具はレンタルできるとして…あと必要なのは何だろうな」

「あ、私バーベキューしたいです!」

「いいね!」


 先輩が広げたキャンプ場の写真を見ながら、一同は楽しさに胸を膨らませていた。

 会話にもそろそろ飽きてきた頃、瀬奈がハッとしたような顔をした。


「あっ!」

「どうした瀬奈?」

「キャンプ用の服、何着ようかなって」

「着替えか。別に何でもいいんじゃないか?」

「どうせなら可愛くしたいんだよね!分かるよ!」


 どうにも共感できない俺と刀司とは違い、琥珀先輩はノリノリで瀬奈とオシャレ談義を始めた。


「そうだ!今から皆で買い出しに行かない?」

「今からですか!?」

「思い立ったら吉日って言うじゃん!行こうよ!ね!」


 暴走気味な先輩はもう行く気満々だ。俺たちは顔を見合わせてから、やれやれと行った様子で買い出しに付き合うことにした。

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