白綿

うきわ

#0 20XX.XX.XX

玲佳はゆるりと瞬きをして、足元の邪魔な雪を蹴った。水分が少なめな雪は足元を舞い、ズボンの裾は少しだけ白くなってしまい、自分がやったことなのにひどく腹が立った。いつもはそんなことで腹が立ったりしないのに、今日そうなってしまったのはきっと彼の手に握られたカサリと音を立てた紙袋のせいなのだろう。袋の中には平たく大きめの箱が二つ入っていた。


息が、真っ白だ。


はるか遠くまで、限りなく白いその世界で、俺はたった1人で堕ちているようなそんな感覚に陥った。




ーーこれは、俺の人並みに幸せで、人並みに辛い、“普通”の人生の話。

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白綿 うきわ @hiro_san__0731

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