結羽人メインでクリスマス(大学時代)
兄さん!今日は皆でクリスマスパーティーをしたいです!
「分かった。15時までには戻ってくる」
そんな会話を今朝した。
現在時刻、13時。
場所はダンジョン内下層。
現在、鬼どもからの足止めをくらっております。
そして、重装備の探索者やどこかの部隊が必死に闘っている。
正直、邪魔でしかない。
しかし、俺が勝手に割り込んで戦線が崩壊すれば確実に犠牲者が出る。
──30分経過──
現在背後からうっすらと光璧を掛けつつ回復を施しているので前線は維持できている状態だ。
鬼4体、小鬼11体相手に善戦している状態ではあるが、無限の体力を持つ鬼達と人間。長期戦は明らかに不利だ。
何よりも俺には時間が無い。
この下層から外に出て、商店街のケーキ屋で予約をしているケーキを受け取り、クリスマスプレゼントを買って帰らなければならない。
時間が無い。
仕方ない…
「後ろに飛べ!」
大音声を発する。
その瞬間に戦闘中の全員が後ろに跳んだ。
同時に俺が前に出て───光璧を薄く形成し、一閃。
そして光璧を再度出して一斉に押し出し、
「聖光、獅咬拳ッ!」
放たれた獅子が鬼達を一掃する。
鬼の落としたモノは瞬時に回収し、獅子に跨がる。
「行け」
「ちょっ!」
誰かが声を掛けてきたがそんな時間は無い。
獅子が吠えると出口目掛けて駆けだした。
SIDE:遭遇した部隊
一瞬だった。
自分らが必死に絶望を呑み込みながら闘っていた鬼達を一瞬で片付けた。
鬼数体の首を何らかの聖職スキルで斬り、聖光系のスキルで間合いを押し広げ、最後に…生きものを召喚した。
いや、アレは本当に生きものなのか。
式神の類ではない。作られた生命のようなものでは無く、紛れもなく個と意思を保ったナニカだった。
「隊長!今は安全な場所までの移動が先決です!」
「全員急げ!今の探索者の後に続けばモンスターは蹴散らされているだろう!」
全員が支度を調えて動き出す。
ここは下層。下手をするとまた鬼や小鬼が出てくる危険地帯だ。少し離れた所で小鬼の魔水晶を拾っている探索者がいるが、欲をかきすぎると命を落とす。
部隊全員が駆け足でその場を後にしたのは僅か2分後だった。
そしてそれから数分と経たずに後方で叫び声が聞こえたが…それは自己責任だ。
SIDE:兄者
流石獣。足が速い。いや、普通の獣に出せる速度ではない。
入口付近まで来たので獅子から降り、頭を撫でるとスッと消えた。
OKあとでご褒美希望と…ペットフードでも与えよう。
かなりの時短にはなったが、14時10分…急がなければ…
ダンジョンから脱出し、何食わぬ顔で敷地をでて歩道を歩いて裏路地へと入り───全力で移動する。
建物の上を一瞬だけ踏み、跳ぶ。
それを数度繰り返し、大通りに出た所で…事故を目撃した。
軽自動車に母親と子ども。
恐らくはトラックが信号無視をしてぶつかってきたのだろう。
こういったモノを見たくないから普段はやらないが…余力は十分にある。
「聖者:癒しの
対象者2名。その親子が光の繭に包まれる。
これで十数分は継続回復が見込める。周りが電話をしているし、それまでには救急車が来るだろう。
空を駆ける。
商店街付近まで来たので歩道側に戻り、時計を見る。
14時14分。
ここから自宅までは10分程度。
混んでいたらギリギリか?
まずはプレゼントを買いに向かう。
元々決めていた友紀と佑那のプレゼントを購入。
トラブルがないよう事前に予約を入れて取り置きしてもらっていたため、特に問題も無く購入することができた。
さあ、お次はケーキだ。
───もの凄く並んでいた。
何故?
「これは、予約者も並ぶのか?」
外で行列整理をしている店員に確認をすると「確認してきます!」と言われたので列に並んで待つ。
15分経過。14時36分になった。
店員は来ない。
まあ、列は動いているが…これは間に合わないか?
「あれ?お客さん!予約の方は並ばなくて良いんですよ!?」
「それを確認してきますと言われて待っていたんだが?」
「ああっ!?済みませんでした!」
全然悪いと思っていなかったように元気よく答えられた。
店内に入り、予約受け取りを───
「んんっ?…お客様、岩崎様は既に受け取られていますが」
「ここに予約票の半券があるのですが?」
「っ!?少々お待ちください!」
はい。連続トラブル入りました。
時間との勝負なんだが…キレても良いか?
4分経過。
「大変申し訳ありませんっ!こちらの手違いで別の方にケーキを渡してしまったようで!」
「済みませんでした!」
「ま た お 前 か」
「えっ!?」
「予約者も並ぶのかと確認したら確認してきますと言われ、十数分待たされた挙げ句この仕打ちなんだが…」
「!?」
店員がサッと目を逸らす。
コイツ反省していない。
「反省していないな…もう時間が無い。返金も要らん失礼する」
「ありがとうございましたー」
「馬鹿っ!お前ッ!お待ちください!」
「時間が無いと言ったはずだ」
他の客がさっきから何事かと見ている。
「中条様分と一緒にお取りになると言うことは…その、パーティーを」
「ああ。中条家と一緒にするので15時までに着かなければならない。それをそこの店員が知らない人に勝手に売り払った以上、俺は手ぶらで帰るしか無いわけだ」
そう言って足早に店を出た。
もうとりあえず家に行こう。全力で。
14時58分
近くのコンビニでケーキを買って家に着いた。
見覚えの無い車があるので中条家の皆さんは来ているようだ。
「ただいま」
兄さんおかえり!時間ギリギリだったね!
友紀が出迎えてくれたが、ケーキを見て首をかしげる。
あれ?ケーキ屋さんに予約してなかった?
「していたんだけどな…店員が関係ないやつに2つとも売ったらしい」
「は?」
あ。
静留が無表情でこっち見ている。
「───ちょっとその事を拡散させておきます」
……なんか知らないが、こちらに被害がないなら、良し。
最近はコンビニスイーツも美味しくなってきたって言うし、クリームとフルーツたっぷりなら!
ああ、友紀に癒やされる…
こうしてクリスマスパーティーには何とか間に合った。
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