友紀のクリスマス配信?
「まあ配信と言うよりも、神様方の忘年会準備及び忘年会の様を中継するのですが」
そう言いながらも僕は揚げ物を作る手を止めない。
「ビール5ケース、チューハイ3ケース、米焼酎4升、芋焼酎4升、麦焼酎2升、日本酒7樽、泡盛3升、ウイスキー1樽、ワイン31本が今回の宴会で使用されます」
タケノコ汁と芋煮も同時並行で作っているのでかなり忙しい。
そして代金がエグすぎて笑えなかった。
でもね、いつもの酒店さんに無理を承知で聞いたら「あるよ」って……
買ったけどさ。買いましたけどさ!
『待ってw』
『酒の量がw樽が普通に紛れてw』
『むしろ日本酒とウイスキーがおかしいw』
『えっ?100人単位?』
『料理もそのクラス作るとか…えっ?待って一人で!?』
「幸い言い出したのが朝でしたので半日ありましたし、何とかなります。あと、今回の日本酒は2斗樽ですので36リットルですね。ウイスキーはバレル樽で180~190といった所でしょうか。揮発しますし。あと作っているのは大体50人分です」
おっと、もも肉全部揚げ終わった。次は手羽だ。
手羽先を使うけど、甘ダレで揚げ焼きにする。
あとは、和風ポテサラとサイコロポークステーキ、ピッツァ、炒飯、おにぎり、サンドイッチ…ああ、咕咾肉も作らないと…
『話している内容と手の動きの乖離が!』
『勉強になるなぁ…(白目)』
『待って!?今サラッと汁物と煮物を片付けたよ!?』
『調理終わったって事やろなぁ…』
『おっ?料理配信初心者か?まあ頭空っぽにして見ていきな』
『この巫女様炒飯作り始めた!?』
『一体何品作るの!?』
「あと3時間で作れるだけ作りますよ?予定はあと6品くらいですかね…ただ、本番前に飲み会は始まっているんですよねぇ…」
『巫女様一人厨房で大宴会場捌ける可能性高し』
『6品(各50人前?)』
『なにそれ怖い』
『実際炒飯2巡目だが?』
『これをあと何巡するのか…えっ?』
『2分掛かってないんですけど!?』
『でもパラパラだぞ!?確り炒飯にしか見えないぞ!?』
『ざっくり計算しよう。2分で3人前。となると50人前は?』
『巫女様…本業料理人じゃないのなんで?』
「僕なんて趣味に毛が生えたようなレベルですよ。本業の人や世の親御さんはもっと凄いんですから」
『ワイ本職料理人。姫様レベルは無理』
『ワイ本職料理人。姫様の動画見て修行し直す決意を固める』
『ワイ子ども3人の母。無理ッス』
『と申しておりますが?』
『マジで一日。一日で良いから巫女様が食堂で料理作って欲しい。食べに行く』
『あ、それなら俺の店一日姫様に明け渡す』
『店長さんイター!』
「駄目ですよ自分の城を明け渡す宣言は…ゆる姉様。そちらの状況はどうなっていますか?」
変な方向に話が行きそうだったのでスタジオ奥の宴会場にいるゆる姉様に話を振る。
「はいはーい。こちらは絶賛修羅場中!誰だよこんな飲み会企画したの!私だよ!」
ゆる姉様が吼える。
因みに僕もスタジオ内に急造されたキッチンで料理をしている。
そしてその喧噪がよーーーく聞こえる。
豪快な笑い声。歌い声、言い合い、怒声…カオスだ。
「ゆる姉様。今神様何名くらいですか?」
「22名。もしかしたらもう少し増えるかも」
「料理、全然足りない可能性が出てきましたね…」
「そだね…」
『え?待って?22名で全然足りない?』
『計算バグって…いや、全員2~3人前食べるとか?』
『アレだけのお酒を飲んで食べる…エンゲル係数死んじゃう!』
『この宴会で何百万吹き飛ぶの?食費は材料費くらいだろうけどさぁ!』
『巫女様過労死案件』
「あと数品付け足して…20人分くらいはかさ増ししないと…ゆる姉様。海外の神様は多めですか?」
「そうだねぇ…新規さん4名ウェスタの紹介だよ」
「…よし。ピッツァを増やして時間稼ぎだ」
『ピザ作る気だったよこの巫女様!』
『料理万能過ぎて笑えない』
『ちょ!今外国の神様が樽酒を大きなひしゃくで掬って飲んだぞ!?』
『……あれ、700mlひしゃくだろ…マジか』
『そりゃあ樽酒買うわな』
「ゆる姉様。ストックしている食事を出して下さい!このままだと本番前にお酒が無くなっちゃう!」
「うえええ!?わかった!料理運ぶの手伝ってー!」
ゆる姉様の声掛けにいつものメンバーがワラワラとやってくる。
そして食べながら持っていく。
『カオスw』
『美女幼女全員自由過ぎん?』
『運びに来たと言うよりも取りに来た感じw』
本当にね!よーしブースト掛けて作るぞー!
「───はい。5時間が経過しました。現在忘年会開始2時間が経過しております。飲み会開始から6時間ですね…食べ物も、お酒も、無くなりました」
課長と巽さんにお願いして追加で持って来て貰ったビール5ケース、日本酒1斗樽を2樽も既にないです。
「まあ、今死屍累々な神様方はずっと人間を護るために戦い続けてきた方々ですから…偶にはこういった楽しい宴会も必要だと思います」
人々から忘れられた神様も今回お見えになった神様の中に居る。
その頑張りを、苦悩を、疲れを…少しでも和らげられたら、望外の喜びです。
「ただせめて、せめて2~3日前に言おうよゆる姉様。「御免忘れてた」じゃないよ…」
『www』
『でも本当に神様方ありがとうございます』
『今回一番凄かったのは紛れもなく巫女様です』
『酔ってお酒を飲ませに来ていた女神様の眼の前で一気飲みをしてお返しにピザを持っていかせる所業。感動しました』
『巫女様飲んだのって、ウイスキーなんだけど…』
『だよな?だよな!?』
『その後酢豚作っておにぎり握ってたよな?』
『巫女様タフ過ぎん?』
「起きてきた人が何か食べたくなった時用にお茶漬けを用意して今回の忘年会は終了します。皆さまご視聴ありがとうございました」
僕は一礼して配信を終えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます