第3話 昔話~岩崎家の団欒(2023.10.14リク3)
「ただいまー…あれ?」
佑那がリビングに入ると結羽人と友紀が珍しく大きなクッションにもたれて読書をしていた。
「珍しい。どうしたの?」
「おかえり。読書の秋だからここでのんびり読書をしようと思ってな。おすすめの本2冊をそこに置いて互いにそれを読んでいる」
そう言いながら結羽人は友紀が進めたと思われる『基本!世界の神族と魔族』『繰り返しの十八史略』を見せた。
「…友紀兄さんの紹介本、なかなか渋いモノ読んで…これ、小説じゃないの?」
「いや、間違いもあるが浅く広く書かれた紹介本と歴史書だな」
佑那は次に友紀の横に置いてある本を見る。
『楽しい経営戦略』
「結羽人兄さんェ…」
?佑那お帰りなさい。
「ただいま。友紀兄さん。何を読んでいるの?」
そう言いながら手にしている本のタイトルを見て顔を引きつらせた。
「『ビジネスマンが知っていて損のない日本酒』って…兄さん…」
料理に合う日本酒とか、静留さんと料理する時覚えていた方が良いかなぁって。
「友紀兄さんに読ませるために用意した?ねえ、結羽人兄さん?」
「ああ。俺は酒にそんなに拘りはないからな」
「その割には部屋一つ保管室があるのは?」
「もらい物だ」
「…私は分からないけど、友達がなんかリシュブールのワインがあるって卒倒していたけど?」
「どれのことを言っているのか分からん。俺は貰ったらあそこに放り込んでいるだけだしなぁ…」
ワインってそんなに高いの?僕、料理で何度か使ったけど…
「友紀兄さん。そんな不安そうな顔しないで。どうせ兄さんが使ったワインって日本語で書かれているヤツが主でしょ?それなら大丈夫よ」
「別にあの中のモノは全部使っても「結羽人兄さん?」別に構わんぞ?」
「阻止したと思ったのに全部言った!」
僕、二人に美味しいもの食べて欲しいけど、高い物が美味しいとは限らないから。
「「……」」
結羽人と佑那は心の中で同時に「ええ子や…」と目を細めた。
「友紀兄さんが健気すぎて辛い」
あ、佑那帰ってきたからおやつにしようか。
「おやつ!何?和?洋?」
肉まんとあんまん。胡麻団子と奶王糯米糍、あとは杏仁豆腐。胡麻団子はたくさん作ったからね。
「っ!やったあ!兄さんがとうとう中華にまで手を出した!」
いや、僕前から中華も作ってたよね?
「でも饅頭類含めて胡麻団子以外は初めてだよ!」
そっかぁ…水煎包とか餃子とか前に作った気がするけどなぁ…
「えっ?あれ、静留さんが有名中華料理店でって…」
足りないから半分は僕が作ったんだよ?静留さん凄く落ち込んでいたでしょ?
「…あれはすぐに模倣してアレンジ加えて作るお前に絶望していただけだぞ?」
「超高級料理店の味だと思ったら、まさかの兄さんの料理だった…だと?」
「恐ろしいくらい区別がつかなかったな…あれ、静留のご両親に食べて貰った時も分からなかったらしいぞ」
「友紀兄さんェ…」
わかりやすく美味しいモノを作る料理人が凄いだけだよ?単純な作りであんなに美味しく仕上げる料理人を賞賛してよ。
「友紀兄さんェ…」
話聞いてた!?
「…美味しかった。ビックリするほど美味しかった…美味しいは正義だと分からされた」
偶には美味しい料理食べて勉強しないとね…僕なんてまだまだだよ。
「料理人でもないのにその腕で謙遜って、オーバーキルだよ?兄弟揃ってオーバーキル大好き人種め」
「お前も最近友人達と良い所行くだろうが」
「行くし、美味しいけど、兄さんの料理食べたあとの皆、完全に食通の顔しているのよ?「あー、あの味はここベースかぁ」みたいな!その時のテーブルに来ていた料理人のキョドった様子を毎回見せられるのよ?」
じゃあ、雑に作る?
「それは嫌」
ぇえー?
「でもお腹いっぱい…夕飯は?」
もう!?簡単な物だよ?三色そぼろ丼とおぼろ豆腐のお味噌汁。兄さんは食べてから出るの?
「…そうだな。今日は食べてから出ようかな」
うんっ!
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