夏の鎖

 今日は休みである。どこで休みを取るかは早い者勝ちだが、基本的にプライベートでやることのない櫻田は枠の余ったところに入れられ、特に異議もなく言われるがまま休日を享受している。休みだから特にどう、ということもない。朝食には茶漬けを食べ、今日は天気がいいので洗濯機を回し、部屋の掃除をする。ワンルームでも、背の低い冷蔵庫に洗濯機、十冊程度の横置き本棚、ハンガーラックと折り畳みベッドしかなければそれなりに持て余す。障害物のほとんどない床に雑巾をかけ、上の方まで拭き掃除してもまだ洗濯機は回っている。ここで櫻田は唯一にして最大の趣味に勤しむことにした。


***


とうに乾いた洗濯物をハンガーラックにかけ、二箇所の窓の鍵を閉めた。財布と鍵をトートバッグへ入れて買い物に行く。帰ってくる頃には、もう闇が落ちるだろう。今日の休日も、前回と変わりない。毎日表情を変えるのは空くらいのものだ。死のにおいなど微塵も漂わせることのない、夏の空が嗤ったように風が吹く。ぬるく微かで、良い眠りを運んできそうな風だった。

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