さみしさの糸




ドレスのすそがほつれて

一本の糸が伸びている

いっぽ、歩くごとに

するり、音がして


ドレスはあなたがくれたもの

眠っている間に着せられて

いっぽ、遠ざかるたび

するり、胸がはだけて


この糸が帰り道の目印になる

それは知っているの

あなたから離れるたび

はだかにされてゆくのは嫌だけど

あなたの元に戻るのは

それより嫌だと言っているの


純白のドレスでわたしをしばり

心からわたしを愛していたひとは

誠実すぎるほど誠実で

わたしは少し不安だった


ドレスのすそがほつれて

わたしは足をとられて倒れた

膝から流れる少しの血

腰から流れる別れの血


この糸があなたへの目印になる

それは知っている

だけど辿りはしない

わたしはこの手を汚さない

戻るときというのは、そう

あなたを殺しに行くときだから

彼女の涙を見るために



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