第12話

「なんだこれ......」


「これは......」


 ネメイオに聞いて大きな町バクエトにきていた。 そして目の前にある巨大な飛行船をみて驚愕している。


「なんで飛行船とかあるのだ?」


 ディンは受け入れられないようで俺に聞いてきた。


「知らん! めちゃくちゃ発展してるじゃないか!」


「千年の間にここまで進歩するとは......」


「ま、まあ、冷静に考えれば千年たてば文明もかなり進むもんな。

お前の国まで船で行かないといけなかったが、すぐいけるとわかってよかった」


「そ、そうだな。 さっさと乗ろう!」


 少し怯えながら、飛行船に乗り込んだ。 これは魔力を動力源とする機器が搭載されているらしい。 それほど普及しているわけではないらしく、航空代金はかなりの額だった。 


 飛行船はゆっくり浮くと、俺たちをのせ飛び立った。


「ふう、なんかあんまり異世界って気がしなくなってきたな」


「ふむ、ここまで進んでいるとは、さすがに予想外であったな。 何か魔力を動力とする機械が産み出されているようだ」


 二人で機内食をかきこんでると、飛行船が大きくゆれる。 乗客の悲鳴が聞こえた。


「ぶおっ! なんだ!?」


「魔力を感じるな...... あれだ! みよ!」


 窓の外に巨大な翼竜のようなモンスターが並走している。


「あれは!?」 


「ワイバーン! ドラゴンの一瞬だ! しかしでかい!!」


 口から炎をはいて、船体を揺らす。 客室乗務員が騒ぐ乗客を防御魔法がありますからと落ち着かせている。


「ぐっ、すごい揺れだ! くそ! このままだとおとされるぞ! ここからフェアネスソウルで!」


「ダメだ! 防御魔法がかかってる! 中からじゃ無理だ! しかたないいくぞ! さっき後ろに上に向かうハッチがあった」


 そういうとディンは通路を走る。


「いくつもりかよ! まて!」


「お客様!!」


 後ろから客室乗務員の声が聞こえた。 


 後方の貨物室に入ると、ハッチにつながるハシゴを上りあける。


「くっ! 風圧がすごくて見えん」

 

「あれだ! 誰かいる!?」


「なに!?」


 ハッチから飛行船の上に降りると、誰かが剣と魔法を使ってワイバーンと戦っている。 しかし、かなりおされている。


「サキミ助けるぞ!! 余の今放てる最大魔法を使う! お主はフェアネスソウルを使って、やつを飛行船より離せ!」


 ーー混沌すら食らう、暴虐の獄炎よ、我が名をもって、その力を顕現させよーー 


「カオティックオーバーフレア」


 黒い巨大な炎球が風圧すら吹き飛ばし、ディンの掲げた手のひらの上にあらわれる。


「よし! フェアネスソウル!!」


 ワイバーンはぐらつき飛行船より離れた。


「よし! いけえええ!!」


 ディンが放った黒い炎の球はワイバーンを飲み込んだ。


「グオオオオオオオ!!」


 だが、炎の中から、ワイバーンは焼かれながらでてきて、こちらに迫ってくる。


「くそ...... 魔力が足りない」


「俺はやつの力を得ている任せろ!! うおおおおおお!!」  


 飛行船の上を走ると、飛び上がりワイバーンの体を叩いた。


「ギャオオオオオ!」


 叩き付けたワイバーンは雲をさきながら地上に落ちていった。


「やった! あっ!」


「サキミ!!」


 予想以上に飛び上がったため、俺は飛行船から離れていく。


「マジックスレッド!」


 空中にいる俺の体に白い糸が巻き付き、ひっぱられ船体の上にに落ちた。


「いてえ!」


「大丈夫ですか!」


 それは鎧を来た緑の髪の少女だった。


「ああ、助かった」


「しかし、すごいですね。 あのワイバーンを素手で倒すとは...... しかもあの少女の魔法......」


 そういってなにかを考えている。


「だが助かりました。 感謝します」


 そう深々と礼をして去っていった。


「俺と変わらん年ぐらいなのに、すごい剣の使い手だった」


「ほおおい、だいじょうぶかぁ」


 ふらふらとディンがやってくる。


「お前が大丈夫じゃないだろ! 飛ばされそうだ!」


「ま、魔力がなくなった......」


 ふらふらのディンの手を引いてって飛行船にもどると、客たちから拍手が起こる。


「ありがとう!」


「まさかワイバーンを倒すなんて!」


「助かったよ!」


 そう感謝される。


「いやぁ......」


 照れていると、ディンがなにかを考えているようだった。


「どうした?」


「いや、あの少女......」


 見ると緑の髪の少女は横になっている。


(すごい強さだったな。 冒険者か)


「ふぁ、でもつかれた......」


「だな。 すこし眠ろう......」


 俺たちは疲れはててフライトの間眠った。

 


「起きろサキミ! 降りるぞ」


「ふぁ、もうついたか...... なっ!」


 窓からは巨大な建物が立ち並んでいるのがみえた。


「信じられん...... モンスターとかと戦っていたのに、別の世界にきたのか」


「ふうむ、現代と変わらんな...... 余たちのいたベルン大陸はよほどの田舎だったようだな」


 ディンがうんうんとうなづいている。


「まあ、よく考えたら、俺のアパートを見ても、ネメイオがさほど驚いてなかったのは気になっていたが、これなら納得だな」


 そうして、都会となった町を散策する。


「それでここなのか、お前の国、確かヴェイオンだっけ?」


「ふむ、そのはずだが...... もはやかつての情景は影も形もない」


「それでさ、よくみたら人じゃない奴らが一杯なんだが」


 歩いているものたちのほとんどが、獣人や小人、人間より巨大な人、下半身が蛇やクモの人たちが普通の洋服を着て歩いている。


「ああ、魔族だ。 さっきの飛行船にもいたろ? どうやら平和に暮らしているようだ。 人に聞いたら魔王が一人いるらしい」


 安心したようにディンは微笑んでいる。


(そういや、獣の耳の人がいたな。 流行りのファッションじゃなかったのか)


「そうか、じゃあどうする?」


「そうだな。 適当にそこいらを観光してかえるか」


「いや、子孫とかとあわなくていいのかよ」


「そんなものいない。 千年もたっておるから、余を知ってるものも普通は生きてはいまい」


 寂しそうにそういった。


「まあ、王様に挨拶ぐらいしていったらどうだ」


「ふむ...... そうだな。 まあ魔王なら余のことぐらいは知っていよう。 少しこの国をみてあってみるか」


 俺たちは観光をしていくことにした。

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