第7話

 ゴツゴツした岩の山道をのぼると、中腹に大きな穴を見つけた。 木で入り口が補強してある。


「ここか...... トロッコやレールもあるな」 


「だな。 トロッコ、レールか昔はそんなものなかったが......」


「千年もたってんだから、進歩しているだろ」


「ふむ、まあそうだな」


 俺たちは坑道内へと足を踏み入れる。


 洞窟内はゴツゴツした岩に木材で補強されていた。


「暗いな......」


「まあ、余はモンスターの魔力を感じるから、問題はないがお主は見えた方がよかろう。 ライトボール!」 


 光のたまが空中にうき、周囲が明るくなった。


「それは魔法か!」


「ふむ、この程度の弱い魔法ならば、この世界に満ちた魔力でつかえるようだ。 昨日試した」


 そういって胸を張る。


(......ポンコツ魔王からポンコ魔王にレベルアップしたな)


 先に進むと、ディンが俺を制する。


「くるぞ! 小さいのが複数!」


 奥からコウモリが数匹飛んでくる。 その大きさは鷹や鷲のようだ。


「ミニバットだ!」


「でけえよ!」


 飛んでくるコウモリに剣を振り回す。


「当たっておらぬではないか!」


「剣なんて使ったことないんだぞ! こんな速く動き回るやつじゃ当たるか!」


「仕方がないのう! アイスショット!」


 氷のつららがコウモリに向かって飛ぶ。 つららがコウモリを貫き全て地面におとした。 落ちたコウモリを剣で仕留める。


「なんとか倒せたか」


「全く! 余がいないとダメなやつだな」


 フフンと横目でみて上から目線で偉そうにそういってくる。


「くっ! 仕方ないだろ! 俺の魔法じゃ、あんなのには効果ないんだからな」


「魔力を体に流せば、基礎能力を高められる。 願いを使えば教えてやれるがな」


「そんな方法が...... ダメだ! まだ願いは使わん!」


 体に魔力を流してみた。


「流れはするが...... 強くなってる気はしないな」


「魔力は流しただけでは意味をなさん。 流して集めてためるのだ」


「なるほど......」


 洞窟を歩きながら、魔力を操作してみる。


「おい、魔力がそのさきから感じる。 多分ストーンゴーレムだな。 しかしこの大きさ......」


 ディンがそういいかけたが、気にせず俺はその奥へとすすんだ。


「まあ、力だけのモンスターなら素手で余裕だ」


「ちょっとまて!! 話を聞け......」


 大きな空間の奥うろうろとする巨大な人影があった。


「グガアアアア!」


 こちらに気づいたのか、ドスンドスンと地面を沈ませながら、近づいてきた。


「フェアネスソウル!」


 ゴーレムの動きが遅くなる。


(よし!)


 有り余る力で地面を蹴り一瞬でゴーレムに近づくと、ゆっくり振り下ろされる腕を軽くかわし、その腕をとって一本背負いした。 


 ドゴオオオオン


 地面に叩きつけるとゴーレムの頭は木っ端微塵になった。


「よーし、よし、よし、よくやったサキミ。 さっさと帰るぞ」


 手で拍手しながら、ディンは離れていく。


「腹立つな。 ん? なんだこれ」


 壊れたゴーレムの頭を失った胴体から拳大の赤い結晶が見えている。


「なあ、なんか結晶があるんだけど?」


「なんだと!! まさか、さっき感じた魔力の大きさは!?」


 ディンは興奮して走り寄ってきて転んだ。


「いたた、これはまさに魔晶だ!」


 そう崇めるようにその結晶を両手でかかげる。


「これで余の魔力が回復す......」


 俺はそれを取り上げた。 


「なにをする!! よこさぬか!」


 跳び跳ねてとろうとするのを片手で頭を押さえる。


「ダメだ。 欲しければ魔法を教えろ!」


「ぬう! ならばもうご飯は作ってやらん!」


 そういってプイッと横を向いた。


「くっ! このやろう!」


「どうする? どうする? 余のご飯をくいたくはないのか?」


(こいつのご飯は確かにうまい...... すごくうまい、くそっ!)


「でもお前強くなるんだろうな。 じゃなきゃ意味ないんだぞ」


「無論だ。 さっきのようにお主が戦えぬ場合、有用であろう」


(確かにな...... 平均化にしても効果のないものもいるからな)


「しゃあない、わかった。 ほれ」


「やっと! 手に入った!」


 ディンは魔晶を手に入れてご満悦だ。


「でどう使うんだ?」


「まあ、みておれ」


 地面に魔晶をおく。


 ーー万物の素となる魔力よ、我が知恵と力となり、この身体に宿れーー


 そうディンが唱えると、魔晶が怪しく輝きその光がディンに入っていく。 そして魔晶は崩れさった。


「ふう、よし少しだが回復した」


 ディンが満足げにつぶやく。


 俺たちはそのまま洞窟よりもどった。



「ストーンゴーレムを一日で......」


 ギルトにもどり、カードを渡すとアラミアさんが驚いている。


「信じられねえ! あのゴーレム、剣すら通さねえから、ほっとかれてたんだよな......」


「ええ、魔法使いのパーティーじゃないと無理っていわれてたわよね......」


「あの坊主と嬢ちゃんそんな強力な魔法使いなのか?」


「いえ、剣をもってるわね...... 魔法剣士かしら?」


 ギルドの冒険者たちは不思議そうに話し合っている。


(平均化の魔法は知られていないのか...... まああれば、だれかがゴーレムを倒してるか、そういやレアってディンがいってたな)


 カードを返してもらった。


「百五十万ゴールド! これだけあれば設備投資できるぞ!」


「余は新しい包丁やまな板、鍋がほしいぞ!」


「がーっはっは! なんでも買っちゃる!! がーっはっは!」


 アパートに帰ると、ネメイオが待っていた。


「ああ、ネメイオ! この間は助かった。 金ができたから、ガスはないんたっけな? なら水道や電気をつけてくれ!」


「ああ、それなんですが...... ミサキさんたち国に社会保険料、固定資産税、住民税、所得税払ってませんよね。 ここは二つの国に半分ずつですが納めないといけません」


「えええ!?」


「両国からうちに国から督促がきていて、代わりに払っておきました。 延滞金も含めて百四十五万ゴールドかかりますのでお願いします」


 そういって手を出したので、俺は震える手でカードを渡した。


 そして俺たちは二週間ねこんだ。


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