第5話
「ふぅ、なんとかなったな」
「よくやったぞ! わが下僕!」
抱きついてきたディンのこめかみを拳でグリグリする。
「だれが下僕だ!!」
「いたい! いたい!! いたあい!! ごめん! ごめぇん!!」
「まあいい、お前の魔法でなんとかなったからな。 許してやる」
俺は手を離した。 ディンはしゃがみ頭を押さえている。
「女の子になんたる手荒な真似を...... ふぅ、それにしてもあの魔法こういうふうに使うのだな」
ぶつぶつ文句をいっている。
「お前が考えたんじゃないのか?」
「余は古文書にのってた魔法を覚えただけだ。 ほら意味のない資格を取る感じだ」
(テキトーだな。 本当にこいつ魔王なのか?)
「まあ、助かった。 この対象と能力を平均化する魔法のおかげだ。 熊と俺の力を均等にわけたから俺は強く、熊は弱くなって動けなくなったわけだな」
「ゆえに、余より強いものがほぼいなかったため、使うことがなかった魔法でもある」
そうディンは胸を張り鼻息を荒くした。
(うん、うそだな......)
「......確かに弱いやつに使っても意味ないからな。 これは相手の魔法も使えるんだろ。 これならジャイアントキリングしまくりだな!」
「ただ気を付けよ。 翼による飛行など、お主が持っていない能力は使えぬし、魔法は大抵使用者には効かんことが多い」
「なるほどな。 まあ俺に翼はないし......」
「よし! 帰って報酬を受け取ろうぞ!」
ディンはカードにモンスターをうつすと意気揚々と歩きだした。
俺たちはギルドに戻り、アラミアさんに話をする。
「し、心配してたんですよ。 あれだけとめたのにディンさまがいくといって出ていってしまったから...... でも諦めてくれてよかったです。 ブレイドベアーはパーティーでも受けない依頼てすから」
「いや、倒したんだけど」
「そう倒したんですね...... えっ!!? 倒した! あのモンスターを!!」
「そうだ! 余にかかればなんということはない」
「お前はなんにもしてないだろう!」
カードを受け取ったアラミアさんが後ろの水晶で確認している。
「ほ、本当だわ。 ブレイドベアーの魔力......」
周囲がざわついている。
「嘘だろ...... あのモンスターを二人だけで......」
「ありえないわ。 ベテランでも避ける依頼なのに」
「数年前に受けた何組かのベテランパーティが逃げ帰ってきたよな」
「まだ冒険者になってすぐよ。 あの子達......」
そう口々に話している。
(そんなに強かったのか...... まあ家よりでかかったもんな)
「し、失礼しました。 ではこちら報酬の百万ゴールドを、入金しました」
「ありがとう」
「ふむ!」
俺たちはギルドをでる。
「金がはいった飯を食うぞ! 食べきれんほどな!」
「まあまて、まずはアパートだ! 電気とガス、水を確保する!」
「なるほど! 拠点の強化だな! 国作りの基本だ!」
「確かに、このまま金を稼いでいけば、国すら夢じゃないかもしれん!」
(いや、稼がなくてもこの金があれば引きこもれるな)
俺たちは意気揚々とあれやこれやと夢を話しながらアパートまで戻った。
「ん? だれかいるな」
アパートの前でキョロキョロしている少女がいた。
「なにをしておる! そこは余の城だ!」
「いや、俺のアパートだろ!!」
「この妙な建物はあなたが建てたのですか」
同い年ぐらいのメガネの少女はそういった。
「まあ、そうだけど」
「すみませんが撤去をおねがいします」
「えっ!? なんで!」
「私、アズレイ不動産のものですが、ここは我が社の所有地です。 勝手に建造物を建てられてはこまります」
「ん? どういうことだ?」
ディンが首をかしげている。
「ここは私どもの土地ということです」
「ええ!!? この世界に、そんなものあるの!」
「当然でしょう。 この世界に余った土地などありませんよ」
中指でメガネを直しながら少女はそういった。
「ですので、速やかな撤去をおねがいします」
「で、でもすぐには...... 不動産、あっ、そうだ! この土地買います! それならいいでしょ!」
「買う? ですがかなりの金額になりますよ。 あなたたちのような子供が買える値段では......」
怪訝な顔でその少女はみる。
「金ならある! この土地はいくらだ!」
ディンはカードを見せた。
「冒険者...... なるほど、ならば可能ですね。 そうですね。 ここは森を含めて、九十九万ゴールドです」
「な、なんだって!!!」
「高すぎであろう!」
「さっきいったでしょう。 モンスターの増加で土地が高騰しているのです。 一年前より十倍にはなっております。 しかもここはテレウス王国とベルクセア公国の二つの領土に関わっており、しかも広大な森を含めてこの価格なのです」
「......くっ!」
「仕方ないぞサキミ買うしかない。 それともほかにすむ場所を見つけるか」
「アパートが...... わかった買う。 買うよ!」
断腸の思いで、カードを不動産屋のネメイオに渡した。
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