第4話
「熊のモンスターなんて本当に倒せんのかよ。 普通の熊でも無理なのに、受付嬢のアラミアさんが必死に止めてたぞ」
草原を歩きながら俺は聞いた。
「ふふん、当然だ。 魔王たる余にまかせろ」
そう胸を張っていうとゴホッゴホッとせきこんだ。
「不安しかないな...... こないだ死にかけたしな」
「心配はない。 この間は余裕だと思ったからだ。 お主を使うことをしなかった」
ディンはそう言いながら俺を指差した。
「は? 俺を?」
「うむ、お主が魔法を使えばいいのだ!」
「魔法を...... でも俺の世界には魔力が少ないんだろ。 俺に魔力なんてあるのか?」
「ああ、確かにあの世界は魔力は少ない。 だがそのため全く魔力を消費せず保有している。 魔力は魂に継承するから、使ってないお前はとんでもない魔力を秘めておる。 あとは使い方と呪文を覚えるだけだ」
(そうなのか...... なら多くの魔法を覚えれば、ここでの生活は安泰...... いや本当に王にさえなれる!)
「よ、よし! ディン魔法を教えてくれ!」
「よし! お前の願いは叶えよう!」
「えっ?」
「だから一つ目の願いは魔法を覚えるだな」
「ちがう! ちがうぞ!」
「じゃあ教えるぞ!」
そういうとニヤリと笑った。
(このやろう!! 一個ずつ教えて願いを消費させるつもりか! くそ! だが使い方と呪文...... いやせめて使い方を知れば、あとで呪文を別に手に入れればいい)
「......よしいいだろう! 当然願いを使わず魔力の使い方もおしえてくれるんだな」
俺は念押しした。
「ああ、教えてやる」
「なら願いを使う!」
「よかろう! 契約に基づき一つ目の願いを叶える!」
そういうとディンプルは目を閉じた。 すると俺の体がほのかに輝く。
「これは!?」
「これで力が感じられるはず、それが魔力だ」
(なんだ体の芯から何かの力を感じる...... これが魔力か)
魔力が俺の体を流れるのを感じた。
「魔力を感じられたようだな。 あとは呪文という言葉で確定させ発現させるそれが魔法だ」
「想像みたいなもんか」
「わかりやすくいえばな...... だが、それを発現させるのは容易くはない。 それでどんな魔法がほしい?」
そしてディンからのひとつ呪文を教わることにした。
「これで使えるのか? まったく実感がない」
「そうだが、それで本当によかったのか? もっと強い攻撃魔法を増やすために願いを使ったらどうだ?」
「これでいい。 願いはあと二回しか使えんからな。 それに俺は魔力が一度にあまり出せんのだろう。 使えないか、威力が弱いなら強い攻撃魔法を覚えても意味がない」
「まあな、お主は魔力の絶対値は多くても出力は少ない。 使用しないと出力コントロールだけは身に付かんからな。 しかしお主が覚えたその魔法はレアで余ですら使ったことがないぞ」
首をかしげながらディンはいう。
「かまわん。 これならなんとかなる」
俺たちはブレイドベアがいるというアスベクの森へとやってきた。
「ブレイドベアってどんなモンスターだ?」
「そうだな。 熊だな」
「そんなことはわかってる! どんな感じなんだ?」
「まあ、うまいな」
「味じゃねえよ! 強さとか能力とか姿とかだよ!」
「ふむ、知らん」
こともなげにディンはそういった。
「知らん!?」
「調理後の肉しかみたことはない。 頻繁にでたから、まあ簡単に狩猟できるのだろう」
「もし俺の魔法の効かんやつだったらどうすんだ!!」
「だから、強力な魔法を覚えろといったろうが!!」
ズシン
俺たちが言い争いをしていると、地面が揺れた。
「なんだ!? 地震か」
「いや、あっちをみろ! 樹々が揺れておる!」
ズシン ズシン
こちらに振動が近づき、バキバキという音がすると、折れた大木の間から四メートルはある巨大な熊が現れた。
「お、おい...... あれじゃないよな......」
「ち、ちがうんじゃないか、あの大きさ...... いや食事に頻繁にでてたのは大きいからかも......」
ズシン! ズシン!! ズシン!!!
その巨体を揺らしてこっちに四つん這いでむかってくる。
「うわああああ!! まただああああ!!」
「うぎゃあああああ!!」
俺たちはまた追いかけられた。 すぐ後ろまで来る
「いやだああああ! 死にゅ!! 死んでしまにゅううう!!」
また取り乱して逃げ惑うディンをみて少し落ち着いた。
(こいつがあまりにもみっともないから逆に冷静になれた。 でもあの大きさのやつに、あの魔法を使ってなんとかなるのかよ...... だが......)
「やらなきゃやられる!」
俺は振り返る。 目の前にビルのような熊が立ち上がりほえた。
「グオオオオオ!」
ーー汝と我、そのかたちは違えども、魂の形は同じ、その力、我と
合わせわけあわんーー
「フェアネスソウル!!」
その瞬間俺と熊の体は光輝き、目の前の熊は突然その場につっぷした。
「よし! 体に力がみなぎる!! やれる!」
地面を蹴ると俺は想像以上、高く飛び上がった。
(うおっ! 風圧が!!)
はるか空までとんだ俺の真下に熊の体がみえる。
「いけ!!!」
動きを止めた熊の頭をなぐりつける。
ドガアアアアアン!
熊は地面にめりこんで動かない。
「おおおお! やりおった!!」
着地するとディンは跳び跳ねて無邪気に喜んでいた。
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