第34話 期末テストの勉強

「市川パイセン……マジ助かるっす!」

「はあ……お前、相変わらずだな」


 俺は桜庭の家に来ていた。


 というのも、


「市川くんいつもごめんね! うちの娘がアホだから」

「ママ! あたしアホじゃないもん!」

「せっかく市川くんが勉強教えてくれるんだから、ちゃんとやりなさい」

「はーい……」


 桜庭とは家が近所だ。


 まあ年下の幼馴染って感じ。


 おばさんに頼まれて、中学の時から俺がたまに勉強を教えていた。


「ジュース持ってくるわね」

「うん! お願い——」


 おばさんが部屋を出ると、


「えへへ……市川パイセンと2人きりだ!」

 

 俺の隣にぴったりと座る桜庭。


「おいおい。今日はちゃんと勉強するぞ」

「だって……市川パイセンを独り占めできるんだもん」

「くっつきすぎだって」


 腕に胸がぎゅうぎゅう当たる。


「ふふふ♡ わざと当ててるっす! 市川パイセンの腕に、あたしの【お・っ・ぱ・い】が当たってる!」


 妙に言葉を区切って、はっきりと言う桜庭。


「おい……おばさんに聞こえるぞ」

「いいっすよ。別に大丈夫です」

「大丈夫じゃねえだろ……」

「もし今度のテストでいい点取ったら……ご褒美ほしいっす!」

「いいけど……何がほしいんだ?」

「デート!」

「マジか」

「うん! 市川パイセンを1日中、で独占したいっす!」


 またデカい声で言う……


 部屋に響くほどだ。


 たぶんおばさんにも聞こえてる。


「本当にいい点だったらいいぞ」

「やったあ! 絶対に市川パイセンと【デート】してやるっす!」


 ★


「まったく……泥棒猫がまた悪さしてますね……」



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