第32話 幼馴染はもう遅い※いろいろな意味で

「なんで、なんで付き合わないのよ……!」

「なんでって……嘘告してSNSに晒したし」

「あ、あれはただの【じょーだん】よ。幼馴染なのにわからないの?」

「いや、わからん」


 俺も亜美も「はあ〜〜」とため息をつく。


 しかも、あんな酷いことしておいて、それをただの【冗談】にするとは……


「春人は……あたしこと好きなんでしょ? あたしと昔、結婚したいって言ってたじゃない!」

「子どもの頃、ね」

「男でしょ? 責任取りなさいよぉぉ!」

「いいえ。春人くんと結婚するのはあたしです」


 亜美が俺の腕をつかむ。


「はあ? 春人がずっと好きだったのはこのあたしなのよ? すっこんでなさい!」

「春人くんを守るのがあたしの使命です。あなたこそすっこんでなさい」

「春人、あたしと一緒に来なさい。あたしの服を【買わせてあげる】わ」


 冬乃が俺の腕をつかんだが、


 俺はその手を振り払った。


「俺は冬乃のことを……幼馴染以上に見れない」

「は……?」

「俺は冬乃のことは好きじゃない」

「わかった。嘘告したこと怒ってるんでしょ? じょーだんのつもりだったけど、一応謝っておくわ。ごめんね。……これでOKでしょ?」

「いいや、OKじゃない。もう好きじゃないんだ」

「わ、わかったわ……あたしたち、嘘告する前に戻りましょう。また告白をやり直すわ」

「今更、もう遅いよ」

「そ、そんな……【美少女のあたし】の告白を断るなんて……あぁぁぁあぁああぁぁあぁあぁぁぁぁ!!」


 冬乃はその場で泣き崩れた。


「春人くん、もう行きましょう」

「うん。じゃあな。冬乃」




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