第30話 幼馴染、不審者となる 冬乃視点

「なによ……! あんな胸がでかいだけの女にデレデレデレデレしちゃってさ! 【クソダサ陰キャ】の春人のくせに!」


 春人たちの跡をつけながら、


 冬乃は脳内でキレまくっていた。


「……たしかにね、あたしは嘘告した。でもさ、あんなのは【じょーだん】でしょ? なに本気になってキレてんのよ? 陰キャの春人に【構ってあげた】だけじゃない。むしろ感謝しなさーい!!」


『おい。あの子、ひとりで叫んでるよ……』

『やべえな』

『ガチなやつだから聞こえないフリ』


 歩きながらブツブツ独り言。


 脳内から漏れ出るドス黒い思考。


 完全に不審者な冬乃である。


 春人たちか店に入ると、


「あの店はあたしが行きたかったブランドの店じゃない。まさか【乳デカ牛女】に買ってやるつもり? そんなお金あるならあたしに貢ぎなさいよおー!」


 帽子にグラサンという不審者ファッションの冬乃は、店の中で浮きまくっていた。


「……え? 水着コーナーに行くの? あの女の水着を買ってあげるつもりなの? そ、そんな……」


 絶望する冬乃の背後から、


『ねえねえ、あれってライバーの涼屋カエデくんじゃない?』

『ほ、本当だ。配信めっちゃおもしろよね』

『見てるだけで尊いわ……』


 JKたちが春人のことを話す。


「なによ……春人ばっかり。ずるいずるい」


 と、泣きそうな気持ちになる。


「あ! 春人が試着室に……あの女と中で、え、え、信じられない……」



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