第20話 パイセンに添い寝してほしい

「市川パイセン……本当にコラボすると思っていたんですか?」

「え? だって桜庭が……」

「あたしの事務所、男性ライバーとコラボ禁止ですから」

「じゃあなんで……?」

「市川パイセンと2人きりになりたくて」


 桜庭は俺の胸に抱きついた。


 クッションのように柔らかい。


 いい匂いもする……


「実はあたし、悩みがあって」

 

 真剣な顔で桜庭が言う。


「どんな悩みだ?」

「これです……」


 スマホを見せてきた。


【暗黒クロエアンチスレ 189】


12 名無しのライバー

クロエブスすぎwww


13 名無しのライバー

歌下手すぎ。キモいわ


14 名無しのライバー

消えてほしい


15 名無しのライバー

ホロホロライブの底辺。他の子に迷惑。


16 名無しのライバー

絶対ビッチwww


「アンチスレか。酷いな」

「1年前から数人のアンチに粘着されて……配信コメントにも酷いこと書き込むし、DMでも……」


 つぶやきアプリYの画面には、


『引退しないと殺す』


「脅迫じゃないか」

「あたし怖くて……」


 桜庭はもっと強く俺に抱きついた。


 胸が、めっちゃ当たる……


「先輩以外に誰にも相談できなくて」

「そうか。辛かったな……」


 震える桜庭の頭を、俺はそっと撫でた。


「またあの時みたいに、あたしを助けて……」

「わかった。助けるよ」

「市川パイセン、やっぱり優しいっすね」

「困ってる後輩のためなら」

「……じゃあ、あたしのお願い、聞いてくれます?」


 上目遣いで、俺を見つめてくる。


「いいよ。なんだ?」

「一緒にベッドで……添い寝して?」

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