第19話 後輩女子とコラボのはずが

「ほほぉ! これが市川パイセンの部屋かあ!」


 放課後、桜庭が俺の家に来た。


「ふむふむ。お主、なかなか良い家に住んでるではないか!」

「何のキャラだよ……」


 今日は親は仕事でいない。


 コラボ配信するにはちょうどいい。


「早く市川パイセンの部屋、い・き・た・い・なぁ!」

「おいおい……」


 妙にテンションの高い桜庭。


 声もやたらでかい。


「なんか元気あるな。今日」

「配信前の準備体操ですー」


 俺の部屋に入ると、


「わあ! ついに市川パイセンの部屋に到達したぞ! くんくんくん」


 桜庭が部屋の匂いを嗅ぎ始める。


「市川パイセンの匂いがするー!」

「バ、バカ……何やって」

「お、ベッドだ」


 ……どすん!

 

 桜庭がベッドにダイブする。


 しかも頭から。 


「ふう……! 市川パイセンの匂いに包まれる……落ち着くなあ」

「何やってんだよ」


 今日の桜庭は少し変だ。


 いつもは割としっかり者なのに。


「てへへ。ついつい興奮しちゃって」

「何の興奮だよ……早く起きろ」


 桜庭は起き上がった。 


「どっかにエッチなもの、ないかなー?」


 ベッドの下を覗き込む。


「そんなものねえよ……」

「本当に?」

「ないないない」

「なんかあやしーなあ?」


 桜庭は部屋全体をぐるりと見渡す。


「ほら、配信するぞ」

「……なんだか、誰かに見られている気がする」

「え?」

「人の視線を感じる……」

「たぶん気のせいだろ」



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