第9話 お弁当作ってきました♡

「えーと、宮本さんの席は……市川くんの隣ね」

「はい!」


 笑顔でこっちへ歩いてくる宮下さん。

 昨日、たまたま席替えをして、俺の隣のがたまたま空いていた。

 すごい偶然だな……


【市川いいなあ】

【水晶マリルの隣かよ】

【席変わってほしい】


 クラスメイトが俺に注目している。

 今まで教室のモブだったのに、宮下さんを助けてからネットでもリアルでも目立ちまくりだ。


「春人くん、これからよろしくね!」


 宮本さんはにっこり笑った。


「こちらこそよろしく……)


(ていうか、どうして転校してきたんだ?)


 ツッコミたいことはたくさんあったが、とりあえずそれは後にしよう。


 ★


 昼休み。


「春人くん! 一緒にお昼食べよう!」


 宮本さんとのお昼を狙っていたクラスメイトたちに睨まれながら、宮本さんに連れていかれる。

 行き先は屋上だ。


(あとで変な噂になりそう……)


 ライバーだから俺と付き合っていると噂になれば、大炎上、間違いなしだ。

 そんな俺の心配を知らないのか、嬉しそうに階段を登る宮本さん。

 

「うーん! 今日はお天気いいね!」


 俺と宮本さんは隣同士で座る。


「春人くんにお弁当、作ってきたの!」

「俺に、お弁当?」

「あたしを助けくれたお礼」

「悪いよ。お礼ならこないだ朝ごはん作ってもらって、部屋の掃除もしてくれたし」

「春人くんは、あたしの命の恩人だもの。それに春人くん栄養偏りがちみたいだから心配で」

「でも……」

「お願い。遠慮せず食べて?」


 宮本さんがうるうるした目で、俺を見つめる。

 せっかく好意で作ってくれたんだ。

 無下に断るのも良くないか。


「ありがとう。いただくよ」

「嬉しい♡ じゃあ、あーんして!」

「いや、自分で食べられるから……」

「きちんと食べないと、身体に良くないのですよ?」


 そういうことじゃないんだが……。

 微笑みながら、俺に卵焼きを食べさせようとする。


「はい! あーん♡」

 

 これは断るのは無理だな。

 恥ずかしいけど……


「はむっ……!」


 柔らかくて、めちゃくちゃうまい卵焼き。


 じっー!


 穴が開きそうなくらい、宮本さんは俺を見つめる。


 うっ……これじゃ食べ辛いな。


「……ど、どうですか?」

「うん……すごくおいしいよ」

「ほ、ほんとですか?? 死ぬほど嬉しいです!!」


 ぱあっと宮本さんの顔が明るくなる。


「次は……からあげですよおー!」


 ピンク色のお弁当箱には、卵焼きにからあげにタコさんウインナー。

 全部、俺の大好物だ。

 朝ごはんの時も俺の好物だったな……すごい偶然だ。


「これから毎日、作ってきますね!」

「そんな毎日なんて、悪いよ」

「春人くんは、うちの事務所の期待の新人なんですよ。ライバーは身体が資本なんです。栄養をちゃんと取ってくださいね」


 たしかに宮本さんの言うことはもっともだけど。

 毎日お昼のお弁当を作ってもらうのはさすがに……


「じゃあさ、俺も宮本さんのお弁当作るよ」

「え? あたしの分を、春人くんが??」


 宮本さんはすごく驚いた顔をした。


「宮本さんにだけお弁当作ってもらうのは悪いから、俺も宮本さんのお弁当作るよ」


 俺の親は共働きだから、自分で自分の食べる物ぐらいは作れる。

 一方的に宮本さんに作ってもらうより、気持ち的に楽だ。

 

「たぶん宮本さんみたいにおいしくは作れないけど」

「春人くんって……すっごく優しいんですね」

「そんなことないよ」

「もっと好きになってしまいました……」

「え?」

「な、なんでもないです!! デザートも食べてくださいね!」


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幼馴染に振られた俺、ダンジョンで配信中の姫騎士をオークから助けてバズる。大手ダンチューバー事務所からデビューが決まったけど、今更戻りたいと言われても無理です〜

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