第3話 朝ごはんを作りにきた?

 ピンポーン!


 朝、インターホンが鳴る。


 親の仕事の関係で、俺は高校から一人暮らしだ。


「こんな朝から誰だ……?」


 母さんか?


 俺はドアを開けた。


「春人くん! おはようございます!」

「おはようございま……え?」


 水晶マリルさんが目の前に立っていた。

 買い物ぶくろを右手に持っている。


「ごめんなさい。本名言ってませんでしたね。宮本亜美って言います。これ、昨日のお礼です」


 水晶マリルもとい宮本さんは、料理の入ったタッパーを渡してきた。


「あ、ありがとうございます……」


 突然すぎで反応できない。


(ていうか、どうして俺の住所を知っているんだ?)


「……お家に上がってもよろしいですか?」

「え、いいけど……」

「朝ごはん、作りますね」


 断ることができずに、家に入れてしまった。


「あの、朝ごはん作ってもらうなんて悪いですよ。お礼はもう十分ですから……」


 キッチンへ向かう宮本さんを呼び止める。


「春人くんは命の恩人です。朝ごはんぐらい作らせてください。それとも、あたしの料理は嫌ですか?」

「いや、そんなことないけど……」

「ありがとうございます♡ 作りますね!」


 宮本さんの目が本気すぎて、俺は拒否できなかった。


「ふんふん♡ おいしいごはん、つくりますからねー」


 なんだかすごく楽しそうだ。


「できましたよ!」


 豪華な朝ごはんだ。

 卵焼き、ベーコン、からあげ……俺の好きなものばかりだ。


(……どうして俺の好みを知っているんだ?)


 俺と宮本さんはテーブルに座った。


「実は謝りたいことがあって……」

「え、どういうこと?」

「これを見てください……」


 宮本さんはスマホの画面を見せてきた。


 Ztubeの切り抜き動画だ。


【人気配信者、水晶マリルを助けた謎の高校生は――秋月高校1年の市川春人くんでした!】


(なんだこれ……??)


「昨日助けてもらった時、配信を切っていなかったので……春人くんの姿が配信されてしまって」

「マジか」

「で、ものすごく【バズって】しまって、春人くんの個人情報が特定されてしまいました……」


 切り抜き動画の再生回数は、100万回を超えている。

 元の配信動画は、300万再生になっている……


【配信コメント】

『すげえ勇気あるな』

『かっこよすぎ』

『おっさんビビっとるwww』

『マジで惚れるわ』

『マリルたんを助けてくれて圧倒的感謝……! スパチャ10万投げる』

『俺は20万』

『俺は100万』

『スパチャがすげえwww』

『どっかからデビューしてほしい』


 俺が知らない間に、たいへんなことになっていた。


「春人くんはすでに人気ライバーなんです」

「いやいや、俺、ライバーじゃないし」

「うちの事務所の社長が、ぜひ春人くんに会いたいと言ってます」

「あの、社長って……?」

「春人くんに、うちからデビューしてほしいみたいで」

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