第2話 美少女ライバーを暴漢から助ける

 放課後、俺は公園にいた。

 今日は家に帰らず、1人でいたかった。


「はあ……最悪だ」


 トークティックで、俺は「キモい」「陰キャ」「臭そう」と言われてる。


 嘘告された側なのに、だ。


 マジで酷すぎるだろ。


「あれ……女の子が配信してる?」


 亜麻色のポニーテールに、大きな瞳。

 肌の色がすげえ白い。


 外での雑談配信なのか、ベンチに座って話している。


 やることもないし、近くで配信を見ることにした。


 しばらくすると、


「うん? あのオッサンは……?」


 女の子の背後から近づいて、


 まさか……


 オッサンが女の子に抱きついた。  


「きゃああああああ!」


 女の子が叫んだ。


 俺はとっさに、女の子のところへ走る。


「マリルちゃん……どうして俺のリプに返信くれないんだよ……ぐへへへ」

「誰か助けて!」


 オッサンの目は、完全にイッている。


「やめろ! その子を離せ!」

「うるせえ! 刺すぞ!」


 オッサンはナイフを取り出した。


「殺すぞ、ガキ」

「……そうか。なら殺せよ」

「何?」

「どうせ生きてても仕方ない。さっさと刺せよ」


 俺はオッサンに近づいていく。

 

「ほら、刺せよ。オッサン」

「……クソ! このキチガ◯が!」


 オッサンはナイフを捨てて逃げて行った。


(どっちがキチガ◯だよ……)


「大丈夫ですか?」


 俺は震える女の子に声かけた。


「あ、ありがとうございます……あたし、本当に怖くて」


 まだ怯えているみたいだ。


「安心して、警察を呼ぶから」


 俺は110に電話した。


「すぐに警察が来るから。もう大丈夫だよ」

「はい……」


 警察が来て、署で事情聴取を受けることに。

 刑事さんに一通り話して、俺は警察署を出た。


 その時、


「あの……今日は本当にありがとうございますっ! あたしは水晶マリルって言います! あなたのお名前は……?」

「俺は市川春人。何もなくてよかったね。じゃあ」


 この時、俺はまだ知らなかった。自分がバズりまくっていたことを。





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