目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~
第48話 ワイバーン一撃マン、クラスメイトにバレる
第48話 ワイバーン一撃マン、クラスメイトにバレる
「あ、お前なにする気だよ?」
力哉が俺の背にそう問いかけてくる。
「決まってんだろ? 倒すんだよ」
「はぁ? なにカッコつけてんだよ。雑魚は引っ込んでろ」
力哉がプルプルと震えながら、かろうじて絞り出したような弱々しい声で罵声を浴びせる。
事ここに至り、まだ自分より下だと思い込んだヤツを罵る
俺は、最大限の嘲笑を込めて、力哉を見下ろして鼻で笑った。
「うるせぇ。雑魚は引っ込んでろ」
「――っ」
そっくりそのまま同じ台詞を返され、力哉は唖然とする。
が、俺の興味はもう力哉から失せている。まあ、厳密には最初からこの男に興味なんてなかったのだが。
俺は、前列の生徒達の目と鼻の先に迫ったヤマオドガラスへ視線を集中させる。
そして、アイテムボックスから取り出した愛用の武器を構えた。
《聖弓》イルムテッド。
太陽の光は雲に隠れているのにもかかわらず、その洗練された
使う矢は、なんの変哲も無い普通の矢。
正しい角度で、正しい位置に、素早い一撃を放てばどんな獲物でも射貫くことが出来る。
そこに、なんの小細工も必要ないのだ。
弦を引き絞ると、矢に蒼銀の光が移り、強く光り輝く。
俺は、ヤマオドガラスの眉間めがけて淀みなく矢を放った。
「《
矢は一直線にヤマオドガラスへ飛ぶ。
その空気を裂く音は、ヤマオドガラスの羽ばたく音より静かに。彼者の赤い目よりも鋭く立ち向かう。
生徒達の頭上を青い閃光となって通り抜け、狙い過たずヤマオドガラスの眉間を貫いた。
『キィアアアアアアッ!』
ヤマオドガラスは断末魔を上げ、生徒達の一歩手前に落下する。
黒い巨体は、その動きを完全に止めていた。
しばらく、静寂の時が流れる。
生徒達は何が起きたのかわからないというような表情を顔に貼り付けて呆然としていたが、やがて俺が矢を放ったことに勘付いて、俺の方を振り返った。
俺自身、もう隠し立てするつもりはなかった。
というか、力哉達にガン見されている。
隠したところですぐにバレるだろう。
こうなるんだったら、わざわざ頭使って「収穫イベント」で争う必要なかったな。
そう思い、俺としては苦笑するしかない。
「うそ……だろ」
「倒したのか? このバケモノを」
「ちょっと待って? 暁斗くんの持ってる弓矢って!?」
「あ、あれワイバーン一撃マンの……!? いや、あれは女の子だって噂がなかったか?」
「でも髪の色はあの人と一緒だよ!」
「本人……いや、まさか……え?」
生徒達が次々に俺の正体に勘付いていく。
ていうか、女の子説まだあったんだ。
芹さんとの記者会見的な謝罪動画で、一応人生初の男性用スーツを着て臨んだから、もう勘違いする人はいないと思ってたのに。
「おい暁斗。なんでお前がその弓矢を持ってんだよ」
振り返ると、力哉が引きつった表情を浮かべて、俺が抱えている弓を指さす。
山戸と咲希は、目を見開いて硬直している。
たぶん、現実についていけていないのだ。
まあ、わけわからん巨大モンスターに襲われ、それを雑魚だと思ってたヤツが平然と倒し、しかもソイツはあの有名人と同じ弓矢を持っている。
自分で有名人とか言っちゃうのもなんか恥ずかしいが……とにかく、彼等にとっては情報過多なのだ。フリーズしてしまうのも理解は出来る。
辛うじて状況に理解が追いついている力哉が、俺へ声をかけてきたわけだが。
もうここまで来たんだし、ネタバレしてもいいだろ。
「その弓矢……その白い髪。お前まさか……」
「たぶんそのまさかだよ。本当はもうちょい正体隠しておく予定だったんだけど」
さりげなく格好付けて、俺はため息をついて見せる。
正体不明の実力者が正体を明かす、そんな展開。そういうの大好きなんだけど、まさか俺がやる側になるとは思わなかったな。
俺は前髪を左右に分け、隠していた青い目を覗かせる。
そして、肩まで伸びた後ろ髪を縛った。
「なっ――!?」
力哉は絶句する。
遂に、力哉すらフリーズしてしまった。
山戸と咲希は、酸素を求める金魚のように口をパクパクさせている。何か言いたいんだろうが、驚きすぎて声が出ないのかな。
「あ、そうだ。ヤマオドガラス換金しないと」
俺は踵を返して、生徒達の間を抜け仕留めた獲物の方へ歩く。
「そ、その顔!?」
「嘘!」
「どうしてウチの学校に!? いや、芹さん助けてたし考えてみれば当然……なのか?」
「なんで今まで気付かなかったんだ……!」
「暁斗くんがワイバーン一撃マンだったの!?」
全員、口々に驚きの声を上げている。
これは……みんなが現実を受け止めた後、いろいろ質問攻めにされるんだろうな。
さて、どうやって切り抜けようか。
そんなことを考えながら、俺はヤマオドガラスを換金するために、受付へ向かうのだった。
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