第7話
「あの子......」
その小柄な少女は、ここには不釣り合いなほど、みすぼらしい格好をしていた。
「ああ、あの格好、とても裕福とは思えないな。 気になるのか」
「ええ、わたしも昔あんな感じだったとおもう...... でもあんな女の子なかなか働き口なんかないから......」
「気になるなら、俺に声をかけたときみたいに話しかければいい」
気をつかっているようなアンナにそう告げた。
「そうね」
アンナはうなづくと少女に近づく。
「ねえ、あなた......」
「は、はい......」
少女は少し驚いたように答えた。
「えっと、あの、そうだ。 私たち本を探してるんだけど、知らないかしら」
「ほ、本ですか、どんなものですか?」
「魔法の種類が書いているとか効果があるとか、そういう本なんだけど知ってるか......」
「あっ、はい、それならあの角の棚にあると思います......」
そうおずおずと話した。
「ありがとう...... それと失礼なんだけど、あなた何か困ってないかな」
「困って...... いえ別に」
そういうとつぎはぎの服を手で隠し目を伏せた。
「えっと......」
「場所がわかるってことは、あの本を読んでるのか?」
俺は少女に聞いてみた。
「えっ? ええ、あそこのはあらかた読みましたから......」
「あの本の内容を知ってるんだったら、私たちに教えてくれないかな。 もちろん報酬は払うわ」
「えっ? 報酬? あ、あなたたちは」
そういって戸惑う彼女、クリュエを外に連れ出した。
クリュエは靴磨きをしながら生計を立てているという。
(それじゃ生活も厳しいだろうな......)
「死んだ私の両親は魔法使いだったんです。 だから私にも魔法が使えるかもって思ったんですが......」
「魔法のスクロールは高いからな」
「ええ、でも魔法も最初はスクロールがなかったはず、だから本を読みあさって魔法を作ろうとしたんです」
そういうとクリュエは目をつぶると、手のひらの上に光る球をだした。
「うおっ!」
「すごいじゃない!」
「いえ、ただ魔力を少し変化させてうごかせるだけ......」
「なるほど、俺たちに協力してくれるなら、報酬として魔法のスクロールを提供しよう」
「ほんとですか!? でも私にはたいした協力なんてできませんけど......」
自信なさげにクリュエはいった。
「俺たちがいう魔法の効果を教えて欲しいんだ」
「えっ? それぐらいならできるかも」
俺たちは宿にクリュエをつれていく。
「じゃあ、いくわね」
アンナはメモっていた魔法の名前をクリュエに伝える。
「それで効果のわかるものを答えて欲しい」
「え、ええ、まずは【ソートモーディング】、物の形を整えます。 【サンピラー】、太陽の光りを集めて輝きます。 【アクアスフィア】、大きな水の球を作ります......」
そういって聞いた魔法の効果をすらすらと答える。
(クリュエ、この子はかなりすごいぞ! 仲間にしたい!)
アンナをみるとうなづいている。
それから俺たちが今交換できる魔法は全て答えてもらった。
「こ、これでよろしいですか?」
おどおどとクリュエはそういった。
「ああ、すごく助かった!」
「ええ、すごいわ! なかなかできないことよ!」
「い、いいえ、たまたま知ってた魔法だっただけです」
俺たちが誉めると、クリュエはほほを赤くしながら首をふる。
「じゃあ、報酬の10万ゴールドだ。 これがあれば魔法のスクロールをかなり買える」
俺が金貨の袋を渡そうとすると、クリュエは後ずさる。
「そ、そんなにいただけません!」
「これは、これからも協力してほしいからだ。 仲間としてな」
「えっ? 仲間?」
「俺たちは国を作ろうとしてるんだ」
「く、国を!?」
クリュエは驚いて口を開けている。
「できるかはわからないけど、私たちだけではできないのはわかった。 それにはあなたの力が必要なの」
自分たちがやろうとしていることをクリュエに伝えた。
「そ、そんなこと、国を自分たちでつくるなんて...... 考えもしなかった」
「信じなくても、やりたいことがあるなら途中で離れてもいい。 まず一緒にやってみないか」
「私たちは居場所をつくりたいの。 自分達のね」
「居場所......」
クリュエは困惑しながら考えている。
しばらくして、口を開けた。
「私は両親のような魔法使いになりたい...... 国をつくればなれますか?」
「ああ、俺たちと国造りをすれば魔法も魔力も増えるさ」
「じ、じゃあ、お願いします!」
クリュエは深く頭を下げた。
俺たちに新しい仲間クリュエができた。
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