第2話
「ふう、いい天気だ」
俺は木にもたれかかって雲ひとつない空をみていた。 あの女性にこちらの世界に飛ばされて目が覚めたらここにいたのだ。 それからかなりの時間ここにいる。
「なにしてるの? そんなところで大丈夫?」
年齢は俺と同じぐらいだろうか、腰にナイフをさし大きな布袋を持ったショートカットの少女が、眉をひそめ話しかけてきた。
「ああ、助けてもらえるのをまっていたんだ」
「は?」
「俺一人ではなにもできない。 だから助けてくれる人をまっていた」
「ど、どういうこと?」
「ここでまっていれば、優しい人が声をかけて助けてくれると思ったんだ」
「じゃあ......」
「まて! 困っている人間がいるんだぞ!」
去ろうとする少女を呼び止める。
「いや、だからなんでわたしが......」
「お願いします!! 助けてください!」
そういって洗練された土下座を披露する。
「や、やめてよ! どうやって助けたらいいの!」
「えーと、住むところと家事と、あとおこずかいと......」
スタスタと少女はあるいていく。
「いいんですか!」
「なにが!」
「優しい君は家に帰ったあと、どうなったか気になって、結局戻って確認にくる、そのプロセスは無駄ですよ」
「もう! あなたは何なのよ!」
少女の名前はアンナといい、なにやら小売りの商人だということがわかった。 俺は彼女につれられた宿で今まで起きたことをかいつまんで話した。
「なるほどね......」
「えっ、アンナ? 信じたの」
「コウミが他の世界の人間なのは信じてないけど、クズなのは信じたわ」
「ありがとう」
「その笑顔はやめてほめてないから! まあ、確かに魔法のせいで戦争や争いになってるのは事実ね」
「ほう」
「でも、だからどうだということでもないわ。 私たちには関係ないもの。 あなたの話が嘘でも本当でも、私も貧乏商人でお金はあまりないから、頼るなら他の人を当たりなさい」
「ぬぅ、どうしたものか...... 徹底的に人に頼ることしか考えてなかったな」
俺がそうつぶやくと、彼女は大きなため息をついた。
「そういや、なんか力をもらったんでしょ。 その力を使ってみたら? 本当にあるのならだけど......」
「あっ、忘れてた。 たしか
「えっ!? その力......」
「知ってるのか?」
「昔聞いた伝説にそんな力をもつ人がいたわ......」
「じゃあすごい力なのか。 試してみるか、でも魔力のあるものがない」
チラリと横目でアンナをみる。 アンナはため息をついた。
「魔力ね...... ほとんどのものに微量の魔力はあるけど、しいていえばアイテムね。 うーん、売れ残りのポーションとか毒消し薬とかならあげられるけど......」
ポーションという回復薬や毒消し薬などは魔力がふくまれているという。 それらを一つずつ袋からだしてテーブルに置いた。
「ふむ、これでどうするんだ?
ポーションの瓶にふれると頭に文字と数字が浮かぶ。
「どうしたの?」
「なんか、頭に文字と数字が...... えっとならんでいる二つの列があって、左側の列にポーション5、毒消し薬4、右側の列に、ラーク草2、ピグリム草2、アンディオの毒3、シーグレットの果実5と他にも浮かんでるな」
そう説明すると、アンナは怪訝な顔をした。
「ここに、草なんかないわよ...... ラーク草、ポーションの原料だわ。 ピグリムは毒消し薬...... それって交換できるものってことじゃない。 その右側の列の数字は最大いくつまである?」
「10まである。 えっとそれはポイズンスネークの牙ってかいてある」
「やっぱり! その数字、ここにあるポーションと毒消し薬の合計だわ! 交換してみて!」
「えーと、ポイズンスネークの牙と
そう俺がつぶやくと、テーブルの上が輝き、目の前にあったポーションと毒消し薬がなくなり、代わりに大きな赤い牙らしきものが置かれていた。
「これポイズンスネークの牙よ!!」
アイナが手に取り驚いている。
「ということは得してんのか!」
「ううん、ポーションと毒消し薬の方が売ったら高いわ」
「だはー! なんだよ! 使えねえ!」
机に突っ伏した。
「商品は需要と供給なの。 ポイズンスネークの牙は加工すればナイフにでもできるけど、そのままじゃね。 でも無駄ってわけじゃない。 その数値が商品価格ではないってことはわかったわ」
そういって俺の目を見る。
「商品価格でその数値があるわけじゃない...... ってことは!」
「ええ、多分魔力の値ね」
「そういや、そんなこといってたな...... つまり魔力値が低くて価格の高いものへ取引できれば、もうけられるってことか!」
「ええ! 調べてみましょう」
それから二人でアイテムの価値を調べ始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます