イセカイトレーダー ~取引《トレード》て異世界に建国する~
@hajimari
第1話
「あっ」
目が覚めると、そこは一面、白い花が咲き乱れる場所だった。
「よし!」
俺は小さくガッツポーズをした。
「なにが、よしですか」
振り向くと、三角の白い大きな帽子を被り、白いローブを着た美しい女性があきれたような顔でこちらをみている。
「えっ? 死んだんじゃないの」
「いいえ、あなた海浦
「えーーー それって生き返るの?」
「まだ死んでません!」
「そうなのか...... このまま、生きてても先がないんたよな。 正直、このまま高校を卒業しても、いけてFラン卒でブラック企業確定人生だしな」
「そんなことはわからないでしょう」
「わかります。 自分のことはわかりますぅ」
「これでは取引の余地がないですね」
はぁ、とため息をついた。
「取引...... いや、それでここどこなの? 天国? ならここに置いてくれ!」
「いや、ここにいられても...... かなり無理したんですけど、どうしましょうか...... かえせるかしら」
「まって! 天国なら働かなくていいんだろ! 帰ったってどうせ辛い日々があるだけ! 絶対に働きたくない! お願いしますぅぅ!」
女性の足へしがみつく。
「はなしてください! なんでそんなに働きたくないんですか!」
「働きたくないことに理由なんて必要なのか?」
真顔でその女性にいうと、彼女の顔がひきつる。
「名言みたいに言わないでください! もう一回はさすがに無理か...... 仕方ないですね」
少し考えるとあきらめたように女性はこちらを真剣な顔でみる。
「コウミ、あなたにお願いがあります」
「お断りします」
「即答!!? なぜですか!」
「なぜなら面倒なことのようだからです」
そう正直に答える。
「......まあ、確かに容易いことではないですね。 ではやはりこのままお帰りください」
「いやだ! いやだ! いやだ! いーやーだー!!!」
花畑に寝転がりだだをこねた。
「プライドとかないんですか!」
「そんなもんは赤ちゃんの時、ほんわかオムツのなかに置いてきたわ!」
「排泄物みたいに言わないでください! だったらわたしのお願いを聞いてください。 うまくすればあなたの世界よりかはましかもしれません」
「あなたの世界より?」
「ええ、実はこの世界には他にも世界があり、あなたはその一つの世界の人間なのです」
「ほう、他の世界に働かなくてよい世界があると?」
「そんなことは言っていません...... いま他の世界に魔の手が迫っているのです」
「危機...... 労働という搾取が迫ってきている?」
「違います! といいたいところですが、当たらずとも遠からずといいますか...... その世界を侵す悪しき者の策謀があるのです」
「策謀?」
「ええ、その世界は健全な世界でした。 皆が過度の欲望をもたず、他者を思いやり、節制にいそしむ、そんな世界でした」
「つまり地獄ですな」
「違います! ですが、そこに欲を撒き散らす者が現れた。 魔王というものです。 魔王はその世界に入り込み、人々を魅了し欲を満たすことを覚えさせたのです」
「それは地球じゃないの?」
「いいえ、金や権力が幅を利かし、それを得るために他者を虐げる道徳なき世界です」
「地球だよね」
「違います!」
「でも、そんなの普通の人間だよ。 別にそのままで良いじゃない」
「そうもいかないのです。 その世界は健全だったゆえに魔力という力を得たのです」
「魔力?」
「ええ、魔力はあらゆる源となる力です」
「それが魔王と関係あるんですか?」
「ええ、魔王は彼らに魔力を用いて使う魔法という力を教えた。 いずれその世界のものたちは、魔法を使いその世界のみならず、全ての異なる世界をも統べようとするでしょう」
「へー、それとお願いがどう関係するのか?」
「わかるでしょう! あなたのもといた世界も支配されるのです! その魔王を倒してください。 さすれば彼らは目覚め正しき道を取り戻すでしょう」
「......なるほど、だが断る!」
「また断った!」
「魔王なんて倒せるわけない。 俺は普通の人間だぞ」
「......しかたない。 ならば、あなたに私から力を与えましょう」
あきれたようにその女性はため息をつきつついった。
「力?」
「
(
「その話確かに伺いました......」
「本当ですか、まさか受け入れるとは......」
少し意外そうに女性は答える。
「それで、次にくれるものは?」
「......じゃあ行ってください......」
女性があきれたようにそういうと、俺の意識は薄れていく。
「他にも! 他にもちょうだい...... ちょ...... う...... だい」
目の前がゆっくり真っ暗になった。
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