第10話 夏織の気迫

 その後で私と美冬は、お互いにバチン、バチンと駒を叩きつけ合い、盤上にて殴り合った。もちろん、その合間にランチを食べ続けることを忘れなかった。

 そして、対局の内容がさらに激戦となる。

 私は、自分の飛車を敵陣に侵入させて、駒を裏返して龍とした。そして、その勢いに乗るように、分厚いお揚げを食べ始めた。う~ん、気合いが入るッ!


「ごちそうさまでした。これ、台所に捨ててくるね」


 先に食べ終わった美冬が立ち上がって残りの汁を捨てに行った。ちなみに、私の方はいつも汁を全部飲むことにしている。このような点でも、私と美冬は行動が異なっている。何から何まで、意見や考え方が割れてしまう。

 美冬の姿を見続けていると、なるで自分が否定されているかのような錯覚に陥ってしまう。とても腹立たしい。

 自分の苛立ちを抑え込むかのように、私は残りの汁を一気に飲み干して満腹になった。後は、美冬を叩き潰すだけだ。よし、台所から戻って来たわね。美冬が再び星座をするタイミングと同時に、私は美冬から奪い取った持ち駒の銀を掴んだ。


「これで、決着をつけるわ!」


 気合いとともに、駒を力まかせに盤上へ叩きつけた。それは、強襲の5二銀!

 一見、タダで銀を捨てるように見える一手だけれども、美冬が銀を取ると同時に、彼女の陣形は大きく乱れることになるからだ。

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