第10話 夏織の気迫
その後で私と美冬は、お互いにバチン、バチンと駒を叩きつけ合い、盤上にて殴り合った。もちろん、その合間にランチを食べ続けることを忘れなかった。
そして、対局の内容がさらに激戦となる。
私は、自分の飛車を敵陣に侵入させて、駒を裏返して龍とした。そして、その勢いに乗るように、分厚いお揚げを食べ始めた。う~ん、気合いが入るッ!
「ごちそうさまでした。これ、台所に捨ててくるね」
先に食べ終わった美冬が立ち上がって残りの汁を捨てに行った。ちなみに、私の方はいつも汁を全部飲むことにしている。このような点でも、私と美冬は行動が異なっている。何から何まで、意見や考え方が割れてしまう。
美冬の姿を見続けていると、なるで自分が否定されているかのような錯覚に陥ってしまう。とても腹立たしい。
自分の苛立ちを抑え込むかのように、私は残りの汁を一気に飲み干して満腹になった。後は、美冬を叩き潰すだけだ。よし、台所から戻って来たわね。美冬が再び星座をするタイミングと同時に、私は美冬から奪い取った持ち駒の銀を掴んだ。
「これで、決着をつけるわ!」
気合いとともに、駒を力まかせに盤上へ叩きつけた。それは、強襲の5二銀!
一見、タダで銀を捨てるように見える一手だけれども、美冬が銀を取ると同時に、彼女の陣形は大きく乱れることになるからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます