第7話 美冬の感激

「ま、負けました! ありがとうございました!」


 私は、葉山先輩との対局で自分の負けを認めて深々と頭を下げた。

 好きな相手との対局は嬉しかったけれども、負けてしまうとやっぱり悔しい。それでも、感謝の気持ちは強いので元気良く叫んでお礼を言っていた。

 私の玉将は、残念ながらこの後でどんなに粘っても、7手で詰んでしまうからだ。私は、詰将棋の本を3冊持っているから、そのくらいは簡単にわかる。


「やっぱり、葉山先輩は強いですね! 尊敬していますよ」


 感激している表情で話してきた美冬は、私と葉山先輩との対局を観戦していた。彼女も葉山先輩との対局では粘ったものの、最後は負けてしまっていた。やはり、葉山先輩がこの将棋部では最強だという状態を、改めて感じ取った。

 ただし、私は美冬が感激している姿を気に入らなかった。もしかしたら、彼女は将棋だけではない恋のライバルになるかもしれない……私はそのように思っていた。


「いえいえ。鎌倉さんも藤沢さんも、2人はとても強いですよ! 私は勝ちましたが、かなり苦戦をしたと感じていますから」


 葉山先輩が、私と美冬に対していつものように優しく励ましてくれた。この人は、本当にすばらしい人だと思う。私が彼に恋心が芽生えることも、当然だと思った。

 そして、美冬も彼のことを好きになって恋のライバルになるという状況は、仕方のないことだった。

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