第2話 譲れない想い
私は、自分の長い髪の毛を後ろ手でポニーテール状にまとめ上げ、さらに気合を高めていった。この髪型にすると、集中力が上がっていくからだ。
私は、昨日のことを思い出す……まさか、まさか自分が好きで愛し合っていたい男性までもが、私と同じだったなんて……!
何気ない会話から、その事実は明らかになった。
「ねえ、夏織。葉山先輩って、素敵だよね……」
美冬が発したその言葉。葉山先輩は、将棋部の部長だ。本名を葉山秋雄という。
私と美冬が手を組んでも、おそらく彼には勝つことができない。それほどまでに、彼の実力は部内で極めて高かった。
彼は、少し口数が少ないものの、思慮深く常に私たちのことを気遣ってくれている……とても優しい先輩だ。ただ、目立つタイプではなく、外見は地味であるため。決して女子にモテるタイプではない。
自分としては、そのうち彼に告白しようと思っていたのだけれども……。
「ちょ、ちょっと美冬!? 私の葉山先輩を奪うつもりなの!?」
美冬が先輩へ告白すると言い出した時、私は思わず頭に血が上って彼女の胸ぐらを掴んでしまった。
「ちょ、ちょっと……夏織……痛いよ……!」
美冬は、私と正反対の性格でおとなしいタイプだ。私の気迫に押された彼女は、かわいらしい瞳に涙を浮かべて困り切っていた。
「だったら、将棋で決着をつけよう! 私と美冬が勝負をして、勝った方が葉山先輩へ告白できる! それでいいわね!?」
「う、うん……わかったよ……私は、夏織に勝つから……!」
おとなしい性格の美冬が私の家で発した第一声に、私は度肝を抜かれてしまった。彼女は、普段では大きな声を出すことをしない。強い覚悟と決意を胸に秘めて、この勝負に挑んできたという気持ちが伝わってきた。
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