13話

side:花梨

「おーい、もう酒がなくなったぞ」

首だけで振り返り、空になった酒缶を振りながら言う義父。


「ちょっと、お義母さんのオムツはもう変えたの!?

前みたいに匂いが充満する前に早くやりなさいよ!」

自分はソファで寛ぎながら、命令だけをしてくる義母。


そして……「花梨、今夜も……いいだろ?」

私の背後にぴったりと立ってお尻を触りながら、息を荒くしているキモ男……私の夫。


―――私の人生、どうしてこんなことになってしまったの?



私が生まれ育ったのは、冬には雪が多く降るど田舎だった。


遅くにできた子だという私は、両親からたくさん甘やかされて育った。

田舎町に相応しく、周りはみんな芋ばっか。

その中で私はいつも飛び抜けて可愛くって、いつもクラスの中心にいた。


でも、大きくなるにつれて段々と分かってきた。

周りより年寄りで農家なんてやってるダサい親、寒いばっかでダサい街、男も女も垢抜けない同級生。

ここは私に相応しくないって。


だから私は、高校卒業後に両親の反対を押し切って都会に出た。

けど東京で生きていくのは思いの外お金がかかった。

住むところの家賃なんかは親が出してくれることになったけど、それでもお金が足りない。


とりあえず可愛い制服も着れるし、普通のメイド喫茶よりは稼げるしってことでメイドリフレを始めた。

裏オプで稼いだり、客と店外で会ってお金を貰ったり。


それから若い女の子がおじさんに色々と援助して貰う……そういうのを最近はパパ活って呼んだりするみたい。

そんなパパ活を始めたりもした。


おじさんを掌で転がすのは性に合っていたみたいで、ちょっと相手をするだけですぐに稼げた。

ブランドバッグだって服だって買ってもらえたし楽勝だった。


コツとしては客のおじさんがシャワーを浴びている時、免許証を抜き取ってベッドの上で自分と一緒に自撮り写真を撮ること。

キモい性癖がある客は、適当に理由をつけて最中の動画も撮っておくとさらに便利。


そうしたらやり逃げ防止になったり、金払いが悪い時の切り札にもなるからね。


かずくんのお父さん……しげるん(金ヅルパパ2号)もそうだった。

何だかんだ1年くらい関係が続いていたのに、もっと若い女を見つけたのか金払いが悪くなっていたから、ちょっと脅したらこれまで以上にいいATMになってくれた。


脅してばっかじゃ爆発しちゃうから、たまにはえっちもさせてあげたけどね。


それからしばらくして、偶然にもリフレの客としてやって来たのが、しげるんの息子であるかずくんだった。

かずくんが見せてきた家族写真でそれが分かって……これは使える。


そう思ってすぐにかずくんをオトそうと決めた。


ちょっと体を許したら、かずくんは簡単にオチた。

奥さんと子どもがいるって?

そんなの関係ない。取られる方が悪いのよ。


かずくんは顔も悪くないし……それに、父親のしげるんは会社の経営者で金持ち。

かずくんは跡取りだっていうし、何なら私が新しい奥さんになってあげてもいい。


しげるんだってどうせ私の言いなりだし、私は未来の社長夫人として優雅に暮らせるってことじゃない?

彩とかいうガキは引き取らなきゃいけないのが面倒くさいけど……まあ小学生ならほっといてもなんとかなるでしょ。


あとは邪魔者奥さんに消えてもらうだけ―――そう思ったのに。


奥さんには全部バレていて、まさか慰謝料を請求される羽目になるなんて。

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