2
『ばぶぅーばぶぅ!』
『はーい重雄くん、お腹空いたのかなー?
おっぱいの時間でちゅよー』
頭にボンネットをつけて、おしゃぶりをして。
大人用のベビー服を身にまといながらベッドに転がる義父。
そんな義父の上に跨る、上半身裸の花梨。
花梨が胸を押し付けると、おしゃぶりを外した義父がそこに吸い付いた。
『んくんくんく……ばぶぅー!』
『はいはい、次はオムツの交換かな?
あらあら……赤ちゃんのくせにこんなに大きくしちゃっていけない子』
『ばぶばぶ……もっと、もっとしてくれぇぇばぶぅぅ……!』
「やめろおおおおおー!」
「いやあああああー!」
義父と花梨の叫び声と同時に映像が止まる。
「何だよ、今の……赤ちゃんプレイ……?」
水を打ったように静まり返る室内に、茫然自失とした和真の呟きが響いた。
「見ていただいた通り、お二人は特殊な性行為も楽しむような関係だったようです」
私が言えば、顔を真っ赤にした花梨が睨んできた。
「みんなの前でこんなの流すなんて……このクソ女……!」
次にスクリーンの画面は、義父と花梨のメールのやり取りを映し出す。
「あなたは、男性と体の関係を持つ代わりにお金を貰う……いわゆる援助交際をしていたのね。
あなたのことを調べる過程で、色んな男性とホテルに出入りする写真が手に入った。
そして、お義父さま。あなたもその内の1人だった」
「……援交じゃないし、パパ活だし」
花梨がボソリと呟く。
パパ活……過去に戻る前の時代では耳にすることも多くなった言葉だけれど、この時代でも使われ始めていたんだ。
一方で義父の顔は、もはや真っ赤を通り越してどす黒くなっていた。
「……私の携帯も勝手に見たのか……!」
そう。私は旭を通じて探偵から“義父と花梨の写真”を貰った後、義父の携帯のチェックも行っていた。
パスワードもかけていない義父の携帯を見るのは容易だった。
その際に、メールに添付されていた件の動画を見つけたのだ。
義父は花梨との特殊な性行為を動画を取られ「この動画を家族に見られてもいいのか」と脅しを受けていた。
援助交際は続いていたけれど、動画がある分義父の立場が弱くなり、普段からいいように使われていたことがメールのやり取りからも分かる。
どうやら義父は、ギリギリまで息子の不倫相手が花梨だということを知らなかったようだ。
花梨がそれを知っていたのかは分からないが……恐らく花梨は知っていて、事前に義父に自分を庇うように要求したってところだろうか。
「花梨が援交……!? 父さんはその客……!?
何だよそれ、何なんだよ!
それにあの動画……うぷっ」
吐き気を催したのか、和真は口元を手で押さえる。
「花梨……お前は俺だけを愛してるんじゃなかったのか……!?
なんで他の男と……父さんと……」
「……ごめんね……花梨も、好きでもない男の人とするなんて本当はイヤだったんだよ?
でも、仕方ないことだったの……東京で生きていくためには、どうしてもお金が足りなかったの。
これだけは信じて! 花梨が心から愛してるのはかずくんだけ。
結婚したいのもかずくんだけなんだよ……!」
隠し事を暴かれた花梨は、瞳を潤ませて必死に弁解をする。
「……だめだ……ちょっと待ってくれ、気持ち悪い……」
しかし和真は真っ青な顔をして首を振る。
他の人たちもとても言葉を発せないようだった。
それ程までにあの動画の威力は大きかった。
それもそうだ、普段は威張り散らしている義父がまさかの「赤ちゃんプレイ」なんてね。
順調に地獄を見ているようだけど―――まだまだこんなものじゃ終わらない。
あなたたちには、もっとドン底まで落ちてもらおうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます