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「それでは次にこちらをご覧ください」
「……え?」
次にスクリーンに映し出されたのは、和真と花梨がラブホテルに出入りする写真。
そこには2人の顔もばっちり写っていた。
しかも証拠の写真は数日分あるため、一回きりだなんだと言い訳することもできない。
「……こんなのいつの間に……」
和真が呆然とスクリーンを見つめている。
「それからもう一つ。こちらの音声をお聞きください」
篠田さんは手元のパソコンを操作し、とある音声を流した。
『彩、この人は岩瀬花梨さん。
パパの大切な恋人なんだ。ママなんかよりずっと綺麗だろう?』
『ママは酷いママだろ?
だから、パパが他の女性を好きになるのも仕方ないことなんだ』
『ねえ彩ちゃん。
意地悪で不細工なママより、若くてかわいいママの方がいいでしょ?』
それは、彩を同行させた不倫デートの様子を録音したものだった。
「これ……まさか盗聴器でも仕掛けてたのか!?」
ギョッとした様子で声を上げる和真。
私と目が合うと、悔しげに睨みつけてきた。
「人のスマホを勝手に盗み見ておまけに盗聴なんて……お前最低だな」
「不倫した挙句、その不倫デートに娘を同行させるあなたには言われたくない」
すぐに言い返せば、言葉に詰まる和真。
これだけ証拠を出されれば、さすがにもう言い逃れはできないだろう。
ふーっと息を大きく吐き出した後、和真は再び顔を上げる。
「分かった分かった、お望み通り離婚はしてやるよ。
手切金代わりに100万くらいならくれてやるから……それで手打ちにしよう」
「いいえ、私があなたに請求する慰謝料は300万です。
それから、夫婦の共有財産として貯金の半分もいただきますのでそのつもりで」
「な……っはあ!?
共有財産!?」
和真からのふざけた提案を一蹴する。
つくづくこちらを馬鹿にしている。
まさかそんなもので済ませるわけがないでしょう?
篠田さんと目を合わせて頷き合う。
そして、篠田さんが口を開いた。
「雪さんは、夫である和真さんの不貞行為によって、多大なる精神的苦痛を被りました。
よって和真さんと協議の上での離婚ならびに、精神的苦痛に対する慰謝料として、300万円の支払いを求めます」
篠田さんの視線が、話し合いが始まって以降沈黙を続ける花梨へと向けられた。
「それから……岩瀬花梨さん。
あなたにも、精神的苦痛に対する慰謝料として200万円の支払いを求めます」
「も、申し訳ありませんでした……!」
花梨が何かを言うより早く、両親が動いた。
椅子から立ち上がった花梨父が、床に膝をついて土下座の勢いで頭を下げる。
「あ、あんた……」
「ほら、一緒に謝るんだ!」
花梨父に促され、花梨母も一緒になって床に膝をついて頭を下げる。
「悪いのはうちの娘です。妻子のいる人と関係を持つなんて許されることじゃねぇ……!
本当に申し訳ありませんでした……!」
必死に頭を下げる花梨の両親。
「花梨、何してる!
おめぇも早く謝らねぇか!」
しかし花梨は、そんな両親の姿を―――鼻で笑った。
「バッカじゃないの?
みっともないマネしないでよ」
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