第9話
言い逃れなんてさせない
「あのう、それでうちの娘が不倫したっていうのは本当なんでしょうか……!?」
まず、真っ先に声を上げたのは花梨の父だった。
「相手はそこの男性ですか……!?」
続けて花梨の母も声を上げて、和真のことを注視する。
「今から詳しくご説明いたします。どうぞおかけください」
篠田さんが冷静に言葉を返せば、花梨の両親は浮かしかけていた腰をおろした。
花梨の両親の口調には強い訛りがあった。年齢は義両親たちと同じくらいだろうか。
ひとりっ子のはずの花梨の年齢を考えると、いささか高齢であるように思えた。
遠く離れた北の方に住む花梨の両親は、農家を営んでいるらしい。
正直、花梨の外見から想像する両親像とは、正反対の雰囲気の人たちだった。
ここに入ってきた時からずっと、花梨は不貞腐れた顔をしている。
まるでこの場に呼ばれたことが不服というばかりに。
この調子では、反省なんてこれっぽっちもしていないみたいだ。
自分の両親が話し始めると、それを横目に花梨は尚更顔をしかめていた。
「それでは、スクリーンをご覧下さい」
篠田さんの言葉に、全員の視線が中央に大きく映し出されたスクリーンへ集まる。
「まず、こちらの高橋雪さんと高橋和真さんは婚姻関係にあります。
しかし和真さんは、そちらの岩瀬花梨さんと不倫関係にありました。
これから当方の所持する証拠を開示します」
スクリーンに映し出されているのは、和真と花梨のメッセージのやり取りだった。
『かずくんだぁいすき♡かずくんも花梨のことすき?』
『もちろん愛してるよ。どんな女も花梨には敵わないよ』
『かずくんとのえっち思い出して、いま花梨ひとりでしてるの……』
『俺も今1人でシテるよ……あー早くまた花梨のでかい胸に挟まれたい』
親たちも含めた大勢に、自分たちのラブラブメッセージが晒されたことに顔を赤くする和真と花梨。
「お2人の関係は○年○月から○年○月の間にかけて続いており、継続的な関係であったといえます」
そこで和真が、ハッと我に返ったように反論してくる。
「いや、確かにかり……岩瀬さんとはメッセージのやり取りをしてました。
でも、これはお互いふざけて送ったものです!
これだけじゃ不倫の決定的な証拠にはならないはずだ……!」
「……そうですね。
確かにこれだけでは不貞行為があったと証明するのは難しいでしょう」
篠田さんの言葉に、和真がニヤリと笑った。
本当に馬鹿な人。
まさかこの証拠だけで、私が勝負を挑みに来たとでも思っているの?
―――そんな甘いことするわけないじゃない。
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