戦いの幕開け

いよいよ、話し合い当日となった。

指定場所は、弁護士事務所の会議室。

そこに一同が集まって、離婚のための話し合いをすることになる。


「お母さん……!

本当にひとりで大丈夫?

やっぱり私も……!」


「お母さんは大丈夫。

だから、彩は優子さんたちと一緒に待っていて。ね?」


これから始まるのは、大人同士の醜い争いだ。

そんなところに彩を連れてはいけない。


「でも……」


心配そうな顔で私を見上げる彩に言う。


「心配してくれてありがとう。

でもねお母さんは、例え何を言われようと……彩との未来を掴むためなら絶対に負けない。

だから信じて待っていて欲しいの」


「……うん、信じる。お母さんは絶対負けない……!」


玄関先で、彩と優子さん、旭が3人並んで見送ってくれる。


「雪ちゃん、頑張って……!」


「雪、頑張れ。

俺たちはいつでも雪の味方だ」


「……お母さん、頑張って……!」


「みんな……ありがとう。

―――行ってきます」


3人分の鼓舞を背に受けて、私は足を踏み出した。


♢


弁護士事務所に一同が集結する。

まず私と、担当弁護士の篠田さんが隣り合って座る。

その向かいには、和真・義父・義母が並んで座った。


見るからに不機嫌な様子で腕を組む義父、そして義母。


義母は私と会うなり「彩を返しなさいよ!この誘拐犯!」と掴みかかってきた。

篠田さんが間に入ってくれたおかげで無事だったが、義母は今も私のことを憎々しげに睨みつけている。


それから、落ち着きない様子で足をずっと貧乏揺すりしている和真。


今回の話し合いには、花梨とその両親も来ることになっている。

しかし、花梨両親の乗った飛行機に遅延があった影響で、少々到着が遅れると連絡があった。


嵐の前の静けさが広がる室内。

会議室のドアが開かれたことで、その沈黙は破られた。


「……すみません、遅くなりました……!

ほら、おめぇも早く入れ!」


新たに入室して来たのは、中年の男女……花梨の両親。

そして、父親の方に引っ張られるようにしながらその後に続く、花梨の姿があった。


花梨たち3人は篠田さんに促され、和真たちの横に並んで座った。

さあこれで、役者は揃った。


「それでは皆さんお揃いになりましたところで、早速始めさせていただきます」


―――戦いの幕開けだ。

















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