第8話

離婚を要求します

離婚の要求をはっきりと言葉で突きつけると、和真は分かりやすく動揺した。


『……俺が他にいったのは、お前がみっともない見た目で女捨ててたのが原因だろ……!

つまり俺は悪くない! 

離婚だっていうならお前が慰謝料を払うべきだ!』


「それなら、同じことを弁護士の前でも主張したらどうですか」


威勢を張るように声を荒げるけれど、弁護士の言葉が出ると途端に弱くなる和真。

数秒黙り込んでから、再び口を開いた。


『……そもそも、お前今どこにいるんだよ?

彩も一緒なのか? 

無理やり連れていくなんてお前最低だな。

つうか誘拐じゃね?』


「……彩は、自分の意思で私について来てくれたのよ」


私が言えば、和真は馬鹿にするように鼻で笑った。


『バレバレの嘘つくなよ。だって彩はお前のこと嫌ってるだろ。

娘に嫌われるなんて、母親としても終わってるよなお前。

彩の親権どうこうってやつも、肝心の彩が嫌がるよ』


ニヤニヤと下劣に笑う和真の顔が、電話越しにも想像できる。


「―――言いたいことはそれだけ?」


『……え?』


私がもっと狼狽えると思ったのだろう。

拍子抜けしたような和真の声に構わず私は言う。


「それならもう切るから。

それと通知書にも書いてあるけど、今後の連絡は全て弁護士を通して。

私は今後一切あなたたちからの連絡には応じない」


『おい、待てふざけんな!

さっきから調子に乗りやがって……お前はただ俺たちのいうことを聞いてればいいんだよ……!』


「まずは、あなたが帰ってきたら弁護士同伴で話し合いましょう。

詳しい日程については弁護士から連絡がいくので。

じゃあ、さようなら」


『ちょっとま……っ』


言い切ったら一方的に電話を終える。

これ以上和真の声を聞いていたら、ストレスで頭がどうにかなりそうだった。


今の時点で、言いたいことは言った。

あとは、話し合いを待つのみだ。


「絶対に、負けない」

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