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彩に言われるままスマホを見ると、日付は確かに8年前を示していた。

何より、目の前の彩の存在が……過去に戻るという嘘みたいなことが私たちに起こったのだと、理解するには十分だった。


「確かに、死に際に“もう一度やり直せたら”って、そう願った記憶はあるけど……まさか、それが叶うなんて……」


まだ夢でも見ている気分だった。

それに対して彩が「私もなの……!」そう声を上げた。


「私もお母さんと同じように、死ぬ前に“もう一度やり直したい”って思って……そうしたら2人とも戻ってこれたんだよ!」


嬉しそうに語る彩。

でも、その中には聞き捨てならない言葉があった。


「……死ぬ前……って、まさかあの後彩も死んでしまったの?

一体どうして……?」


彩は気まずそうな顔をして、小さな声で答えた。


「……その……お母さんの後を追って、自分で……」


それはつまり、自ら命を絶ったということ。


「……そんな……なんてことを……」


娘が自分の後を追って死んでいたという事実は、ショックが大きかった。

声が震えて、それ以上言葉が出ない。


「で、でもさそれでこうして過去に戻って来れたわけだし……!

……ごめんなさい……」


しゅんと肩を落とす彩のことを、私はそっと抱きしめた。


「……辛い思いをさせて、ごめんね……」


今なら、この子のことをちゃんと抱きしめてあげられる。


「……お母さん……」


一度は止まっていた彩の涙が再び溢れ出す。

私の目にも涙がたまり、一瞬で溢れた。


「よかった……また会えて、よかったぁ……!

……もう、死んじゃやだよぉ……」


「……うん、うん……ごめんね、もう1人にしないからね……。

彩……っ」


私たちは、抱き合ってわんわんと泣き続けた。



どれくらいそうしていただろうか。もう、お互いに涙も鼻水もぐずぐずで。


「……お母さん、ティッシュ」


「ありがとう……」


それを拭いながらなんとか気持ちを落ち着かせて、私たちは新たな”これから“のことを話す。


「……過去に戻ってこれたのだから、もう前と同じようにはさせない」


和真や不倫相手、義両親にいいようにされた人生。

私は弱かった。その弱さが、彩を傷つけた。

もう二度と繰り返すわけにはいかない。


改めて、彩のことを見つめる。


「……彩。今度こそ私は、あなたと2人で生きていきたいと思ってる」


「私も……お母さんと一緒に生きていきたい。

今度こそ、絶対に間違えない」


強い眼差しで私を見返し、そう頷いてくれる彩。

その答えが聞けただけで嬉しかった。


でも、そのためには―――戦うべき相手がいる。


夫でありながら庇うどころか嫁いびりに加担し、挙句に不倫して私を捨てた和真。

虐待じみた嫁いびりを繰り返し、私たち親子の仲を切り裂いた義母。

私を嫁以下の下僕として扱い続けた義父。

不倫して悪びれることもなく、妻の座を乗っ取った不倫相手・花梨。


彼らのやってきたことを突きつけて、報いを受けさせる。


「私も、お母さんと一緒に戦う……!」


そして―――私たちは、奪われてきた親子の時間を取り戻すんだ。


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