2
彩に言われるままスマホを見ると、日付は確かに8年前を示していた。
何より、目の前の彩の存在が……過去に戻るという嘘みたいなことが私たちに起こったのだと、理解するには十分だった。
「確かに、死に際に“もう一度やり直せたら”って、そう願った記憶はあるけど……まさか、それが叶うなんて……」
まだ夢でも見ている気分だった。
それに対して彩が「私もなの……!」そう声を上げた。
「私もお母さんと同じように、死ぬ前に“もう一度やり直したい”って思って……そうしたら2人とも戻ってこれたんだよ!」
嬉しそうに語る彩。
でも、その中には聞き捨てならない言葉があった。
「……死ぬ前……って、まさかあの後彩も死んでしまったの?
一体どうして……?」
彩は気まずそうな顔をして、小さな声で答えた。
「……その……お母さんの後を追って、自分で……」
それはつまり、自ら命を絶ったということ。
「……そんな……なんてことを……」
娘が自分の後を追って死んでいたという事実は、ショックが大きかった。
声が震えて、それ以上言葉が出ない。
「で、でもさそれでこうして過去に戻って来れたわけだし……!
……ごめんなさい……」
しゅんと肩を落とす彩のことを、私はそっと抱きしめた。
「……辛い思いをさせて、ごめんね……」
今なら、この子のことをちゃんと抱きしめてあげられる。
「……お母さん……」
一度は止まっていた彩の涙が再び溢れ出す。
私の目にも涙がたまり、一瞬で溢れた。
「よかった……また会えて、よかったぁ……!
……もう、死んじゃやだよぉ……」
「……うん、うん……ごめんね、もう1人にしないからね……。
彩……っ」
私たちは、抱き合ってわんわんと泣き続けた。
♢
どれくらいそうしていただろうか。もう、お互いに涙も鼻水もぐずぐずで。
「……お母さん、ティッシュ」
「ありがとう……」
それを拭いながらなんとか気持ちを落ち着かせて、私たちは新たな”これから“のことを話す。
「……過去に戻ってこれたのだから、もう前と同じようにはさせない」
和真や不倫相手、義両親にいいようにされた人生。
私は弱かった。その弱さが、彩を傷つけた。
もう二度と繰り返すわけにはいかない。
改めて、彩のことを見つめる。
「……彩。今度こそ私は、あなたと2人で生きていきたいと思ってる」
「私も……お母さんと一緒に生きていきたい。
今度こそ、絶対に間違えない」
強い眼差しで私を見返し、そう頷いてくれる彩。
その答えが聞けただけで嬉しかった。
でも、そのためには―――戦うべき相手がいる。
夫でありながら庇うどころか嫁いびりに加担し、挙句に不倫して私を捨てた和真。
虐待じみた嫁いびりを繰り返し、私たち親子の仲を切り裂いた義母。
私を嫁以下の下僕として扱い続けた義父。
不倫して悪びれることもなく、妻の座を乗っ取った不倫相手・花梨。
彼らのやってきたことを突きつけて、報いを受けさせる。
「私も、お母さんと一緒に戦う……!」
そして―――私たちは、奪われてきた親子の時間を取り戻すんだ。
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