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同居した翌日から、専業主婦なら当たり前と家の中の全ての家事が私に押し付けられた。


義父は男尊女卑の強い人で、二言目には「誰のおかげで飯が食えると思っている」

帰宅時には三つ指をついた挨拶を強要されて、それをしなかった日には執拗に叱られた。


義母は私のやることなすことにケチをつけた。

家にいることの多い義母は、掃除の出来や料理の味に文句をつけるのは当たり前で「なんて不出来な嫁だ」とわざとらしくため息をついて。


義両親にとって私は、家政婦……いや、ただの下僕のような存在だった。


扱いの酷さを和真に訴えたら、最初の頃こそ私の味方をして義両親に苦言を呈すこともあった。

でも結局和真は義両親側につき、私を庇うどころか「両親と上手くやれないお前が悪い」と次第に責めるようになっていった。


そんな生活は、私の心を徐々にすり減らしていった。


「ママ……だいじょうぶ?」


この家で私の味方は、当時7歳だった娘の彩だけだった。

私の元気がないことを心配してくれる優しい子。

彩の存在だけが心の支えだった。


けれどそんな彩との関係も、壊されていくことになる。


女なんてと言っていた義両親も、いざ初孫と暮らせば絆されたらしく、彩のことは可愛がった。

特に義母は、彩の育児についても何かと口を出してきた。


同時期に、要介護となった義父の母親……義祖母を義実家で引き取ることになった。

施設などに入れるのは体裁が悪いと、義父が強引に決めたのだ。


義祖母のためという名目で家を大々的にリフォームして、義両親に取り上げられていた私の貯金……父の遺産は、そこで勝手に使い切られた。

そして、当然のようにその介護は私に押し付ける。


認知症を併発している相手への慣れない介護は、予想を遥かに超える大変さだった。

深夜でも何かと呼びつけられるため、睡眠時間もどんどん削られていって。

そんな日々に追われていたからこそ、彩の変化にすぐ気づくことができなかった。


ある日、彩は涙ぐみながら私に言った。


「ママはさやがきらいなの……?」


そんなこと絶対にあり得ない。

けれど私は、彩のことを思うからこそ時には厳しくもするし叱りもする。

けれど義両親や和真はそうじゃない。

何でもいいよいいよと甘やかすだけ。


挙句に義母は、それを「私が彩のことを嫌っているからだ」と出鱈目を吹き込んでいたらしい。

そんなことない、ママは彩のことが大好きだと精一杯に抱きしめながら伝えた。

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