第17話 商品名

 買い物に行く途中のマンションの生垣にピンク色の小さな花が咲いていました。


 椿にしては早いなと思いましたが、通りすがったご年配の女性二人連れが山茶花さざんかだと言っていたので、正解を知ることができました。


 山茶花は11月〜2月頃、椿は1月〜4月頃に咲くそうです。


 ネットで調べると、山茶花の別名は色々ありますが、中には「小つばき」「山つばき」というのもあるそうです。


 そう言われてみれば、椿よりわずかに花が小さいようにも思います。


 ちなみに、椿は散る時には花ごとぼとっと落ちますが、山茶花は花びら一枚ずつ散るそうです。


 ですが、ぱっと見では区別する自信はありませんので「あら、椿かしら、山茶花かしら」と断定をしないようにすることで赤っ恥回避をしたいと思います。



 道中、そんなことがありながら、向かった先は百円ショップです。


 小麦粉を入れる容器を買うためです。


 スーパーの上階にある店舗で、売り場面積も広いので調理器具の場所を探すのも一苦労でした。


 いつも行く店舗はどこになにがあるのかは何となくわかりますが、その日は他の用事もあったので同じ会社の他店舗を利用したせいもありまして余計勝手がわからなかったこともあります。


 それよりも、取り扱い分野や種類、商品が多すぎて。


 調理器具の区画にたどり着けても、そこからまたお目当ての物を探すのにうろちょろせざるを得ません。


 一応は自力で探してはみるのですが、面倒くさくなると近くの店員さんに尋ねます。


 今回も店員さんに声を掛けたのですが、100均て明確な商品名ってあまりないことに気付きました。


「すみません、小麦粉入れてふりふりして出す容器はありますか」


 身振り手振りを交えて説明しました。


 こんな抽象的な尋ね文句でも、店員さんはすぐにピンときたようで、棚まで誘導してくださいました。


 また別の日ですが違う店舗で、


「コンセントの使わない穴に差し込むヤツありますか」


 と尋ねると、見事にトラッキング防止するカバーに案内してくださいました。


 多種多様で膨大な商品の中から顧客の要望の商品を弾き出し、どこにあるかまで把握しているのですから、店員さんの知識と能力に低頭するばかりです。


 余談ですが、小麦粉の容器は「小麦粉ふりふりストッカー」、コンセントは「コンセントカバー」というそうです。


 ちゃんと調べてから行けば、忙しい店員さんに余計な想像力を働かせることなく案内だけで済ませられるのに、と我が面倒くさがりを反省しました。


 と同時に、商品名の重要さを思い知りました。


 某製薬会社の、どストレートなネーミングは商品の性能もさることながら、色んな人々の手間暇を省くという点でもとっても優秀なのですね。

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