第31話  軍団

スケルトンナイトの軍団を先行させ俺達は10層へ進む。

ゾルゴルスは殿だ。


スケルトンナイトは頑強だが、遅い。

力が無い訳では無いが、剛力でもない。


オーガが出てくると、1対1では勝てない。

オーガの前方で2体が盾でオーガの攻撃を防ぎ、2体がその隙にオーガの左右から攻撃する。

そうやって戦闘をする間に、オーガの後方に移動したスケルトンナイト達が背後よりオーガを滅多刺しにする。

数は力だ。


1体では強力な個体では無いが、連携が非常に良い。

複数体のオーガが出てきても囲んで倒してしまう。


「デスリザレクション」


オーガの死体を霧が包み、死体を蘇生する。

既にオーガの軍団も20体ほどになってきた。

トレントが出てきても数で圧倒している。

10層を練り歩き、軍団を拡大し、それぞれの個体の格を上げていく。


トレントに関しては死体を蘇生しても動きが遅すぎて行軍速度が著しく落ちるのでドロップアイテムの回収のみだ。


グレックとカイザルに関しては、完全に俺の監視役兼護衛というポジションになっていて、基本的には階層の攻略はスケルトンナイトとオーガの軍団で殲滅している。


ハーピーが出てきた時のみ、ゾルゴルスが対応している。

ハーピーに関しても15体ほどは蘇生して引き連れている。


ここまで軍団が拡大すると既に10層では殲滅戦のような感じで、危険を感じることも無い。

定期的なスピリチュアルチャージを各個体に行い、軍団を回復し強化していく。


俺の魔力や霊力もかなり上がっているのだろう。

軍団が拡大しているにも関わらず枯渇する様子が無い。


それだけデモンズゲートでのゾルゴルスの召喚に必要だった魔力と霊力が膨大だった事が改めて認識させられる。


途中でサモンアンデットを行い、ヴァンパイアバットを50体召喚した。

試しにオーガと戦わせてみたが、数匹はオーガの攻撃でふっ飛ばされていたが、その隙に四方八方からオーガに噛みつき吸血を行っていた。

数が多い為にオーガの全身がヴァンパイアバットで真っ黒になるほどに群がり、次第に動きを遅くしたオーガは干からびてシワシワになって倒れた。


かなりの血液を吸ったであろうヴァンパイアバットは体が膨張する事も無く、更に格が上がったようだ。


11層を前にして、一度休憩を取って俺達は11層に進んだ。

アンデットの軍団はもの凄い数になっている。

11層に入り、ナイトシャドウウルフが襲ってくるようになったが、流石に多勢に無勢、俺はナイトシャドウウルフにもデスリザレクションを使い、軍団に加えていく。


「ここだ」


俺達はグリーンドラゴンとの戦闘跡に着いた。


爆発の痕跡、焼き尽くされた周辺の景色が凄まじい戦闘だった事を現している。


「いないな」


あのピリつくような圧力、近くにいれば必ず分かるはず。

そして咆哮も聴こえない。


俺は、念のためにスピリチュアルサーチを使いながら11層を進む。


12層手前の安全地帯。

誰もいない。

だが、霊魂が残されているとすればここだろう。


「頼む。スピリチュアルサーチ」


反応はない。


全滅。

だろう。


結局は俺の無力さを知っただけだった。


不思議とグリーンドラゴンに対する怒りは無い。

むしろ自分自身への怒りが強い。


動きを止めて呆然としている俺をグレックとカイザルは何かを察してくれたのだろう、何も言わずに俺が再起動するのを待ってくれている。


しばらくするとゆっくりと冷静になってくる。

怒りも無くなった。


俺は人間らしい心が無くなってきているのかもしれない。

ネクロマンサーの力を教会が危険視する事も良く分かる。


この強力な力。

伯爵は知っていたようだが、我ながら恐ろしい。


グレックとカイザルがずっと無言なのも、既に俺を抹殺対象として見ているからなのかもしれない。

情が移らぬように。

考える事はいろいろある。

怒り、悲しみ、考察、様々な事が心を過る。


でも、それら全てはグリーンドラゴンを倒した後だ。

とにかく奴を倒さねば何も先には進まない。


「12層に進もう」


そう言って12層に進む。

入った瞬間に分かった。

いる。

凄まじい圧力だ。

分かってはいたが、あの惨劇を思い出す。

恐怖。

軍団を引き連れても恐怖が襲いかかってくる。

全滅させられた。

瞬殺だった。

手も足も出なかった。

不意打ちだったからだろう。

今回は違う。

軍団を引き連れて、いるのが分かって進む。

最悪、死にかかっても一度は助かるアクセサリーも装備している。


「います。奴です」


グレッグとカイザルは俺の言葉に目を合わせ頷く。


さぁ、いよいよ決戦だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る