第9話 森の妖精達

周りが騒がしくなってきて、俺は目を覚ました。

霊力が身体に溢れるのを感じる。

おお、やっぱりこの領域は最高な休憩スポットだな。


そんな事を考えて身体を起こすと、俺の周りにはかなりの数の妖精達が集まっていた。


「お主、死霊術師じゃな?」


「お、分かるのか?」


なんかヨボヨボの妖精が出てきた。

もう飛べなくなってしまったようで、苔の上に立っている。

羽も萎れてるな。


「昔は良く訪れてたからな。もう百年以上も会ってなかったわ」


「どうして分かるんだ?」


「お主が従えてきた狼、死の気配と高まった霊力、そんな存在を従えてるなんて死霊術師しかおらんじゃろ」


「まぁそうか、妖精だもんな、霊力に関しては敏感か」


「して、お主、妖精の羽の粉が必要との事じゃったかな?」


「そうなんだ。依頼でな。集めてこいって事なんだわ」


「私達も羽の粉を上げることは労力は伴うが、命の危険があるわけでも無いからな、相応の対価を用意してくれるならば渡さん事もないぞ」


「対価?」


「死霊術師に頼む事なんて決まっておるだろう。私らにとっては100年以上も待った存在だ」


「頼みごとか、いいぞなんだ?」


「私達は長い間この森の守護者として生きてきた。しかし、寿命を迎えた妖精達のためにお力を貸してもらえんか?」


俺は妖精達の心の奥底にある思いを感じ取り、の要望を受け入れた。


「もし許可いただけるのなら、デスリザレクションという魔法を使い、寿命を迎えた妖精達とあなた達の再会を果たすことができると思うぞ」


「「「おおおおお」」」

「「「すげー」」」

「かーちゃんに会えるの」

「ミーナに会える?」

「また一緒に遊べるかな?」



妖精たちは驚きと感謝の表情で俺の周りを飛び回り始めた。



「それが可能なら、どうか頼む。私達の仲間たちは幼い木々が植えられた墓に眠っている。そこへ案内する」


俺は妖精たちに従い、幼い木々が植えられた墓へと案内された。

墓は静寂に包まれており、妖精たちの寿命を終えた証として立ち並んでいた。


俺はデスリザレクションの魔法を唱え、妖精達の魂を呼び戻しました。

この領域で休息をとって、溢れんばかりに身体に溜め込んだ霊力。

その全て霊力を魔力と共にデスリザレクションの魔法に注ぎ込む。


幼い木々が揺れ、土から生命力が湧き出すように感じられた。

一瞬、墓の周りに薄い霧が立ち込めた、そして亡くなった妖精たちが次々と姿を現した。

彼らは幸せそうな笑顔で、再び自分たちの仲間との再会を喜んでいた。


「とうちゃーん」

「おおお」

「エリーカ」

「元気にしてたか?」

「会いたかったよぉぉ」

「大きくなったなぁ」

「遊ぼうぜ」


再会の瞬間、涙が流れる妖精もいれば、笑顔で抱きしめ合う仲間もいた。


俺は静かに立ち尽くし、妖精たちが亡くなった仲間と再会する瞬間を見守った。

デスリザレクションの魔法は、死者と生者の絆を再び結ぶ奇跡をもたらしていた。

モーリスが言っていた光景に近いのかもしれない。

かつては人間も墓でこうやって死者との再会をはたしていたそうだ。

教会の教えが広まるまでは。


この森の奥深くで、俺は死者と生者の交わりを証人として見届けた。

俺は喜びに満ちた心で妖精たちを見ていた。


「死霊術にこんな使い方があったなんてな、俺は君達の仲間たちとの再会を手伝うことが本当に嬉しいよ。俺の力が少しでもお役に立てたなら良かった」


「こちらこそ、感謝じゃ。昔の仲間、家族にまた会えた喜びを今日は存分に満喫出来ている」


年老いた妖精は感謝の言葉を口にし、冒険者に深く頭を下げました。


「お主の優しさと力の強さに心から感謝する。我々の仲間たちとの再会は、長い間ずっと願っていた奇跡じゃ」


「妖精の羽の粉をもらうっていう打算もあるんだけどな」


「何を言う、まさかこれだけの仲間と再会出来るとは思わんかった、お主の霊力を見縊っておったわ」


「俺も流石に霊力も魔力も空っぽだ、またしばらく休ませてもらうぞ」


俺は妖精達が幸せなひとときを過ごし、再会の喜びを分かち合う声を聞きながら目を閉じた。

再会の宴は夜遅くまで続きそうだ。




翌朝、妖精たちは感謝の意を込めて、俺に羽の粉をくれた。

羽の粉は微細な凹凸を持ち魔法の力が宿っている、それにより羽ばたく際に風の精霊の助けで飛ぶことが出来ているらしい。

この羽の粉が無いと飛ぶ力が大幅に減ってしまうため、妖精たちはこれを大切に保管していた。


「これが妖精の羽の粉だ。お主の役立ててくれることを願っているぞ」


俺は感謝の意を表すと、羽の粉を慎重に受け取った。


「ありがとう。これで依頼を果たせる。また何か力になれることがあれば言ってくれ」


妖精達は微笑みながら頷き、俺は彼らと別れて街へと戻った。


街では人々が日常の喧騒に忙しく動いていた。

しかし、俺は心に妖精たちとの再会の喜びを秘めていた。


そして、冒険者組合へと向かった。


冒険者組合に到着し、妖精の羽の粉の回収を報告するために受付に足を運んだ。

俺はマジックポーチから回収用の瓶を何本も取り出しカウンターへ提出した、中には輝く羽の粉が詰まっていた。


「妖精の羽の粉の回収依頼を受けたハルだ。妖精の羽の粉の回収を終えたよ」


受付の担当者は俺の姿を見てにっこりと笑った。


「こんなにたくさん!ありがとうございます。すごい量の羽の粉ですね。流石です。報酬も相応しく増えるよう手続きを進めますね」


受付の担当者は粉の入った瓶を受け取り、手際よく記録を取りながら言った。


「ハル様こちらが報酬の銀貨20枚となります。規定量を大幅に超えた回収量だったので、報酬も多めに出させていただきました。最近少し不足していた素材ですので助かりました」


報酬を受け取り、銀貨を手に取って大切にポーチにしまった、充実感に満ちた気持ちで組合を後にした。


俺は妖精の羽の粉を集める冒険を思い返しながら、個人的な打ち上げをするために、落ちこぼれ酒場へと向かった。



「良し!打ち上げだ!がっつり飲んで食うぞ!」



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