第4話 ダンジョンとは

「何も無理して買うこと無いんじゃないか?」


俺は落ちこぼれ酒場で今日も飲んでいた。

そして、この世の酸いも甘いも経験してきたであろうマスターに相談した。


「自分だけのものにしたいとかウブ過ぎだろ」


「そうなのかな?」


「まぁ、お前の気持ちが分からん訳じゃないぞ、俺も男だからな。だが、そのうち他の星空娘から声かけられる事もあるだろうし、何も初めての女にそこまで入れ込まなくても良いような気もするぞ。もう少し広くおおらかに考えてみたらどうだ?」


「マスターの言う事も分かる。冷静な俺の考えは理解してるんだよ。だけど心が否定してくるんだよ。分かるだろ?今日だってヨーコが他の男といると思うとさ、こうやって飲んで心を紛らわせなきゃ辛いんだよ」


「完全にハマったな。まぁヨーコはプロだからな。ウブなお前すら魅了出来ないようじゃ商売上がったり、廃棄奴隷にされちまうだろうだろうよ」


「廃棄奴隷?まぁ奴隷も所持してるだけで、いろんな費用がかかるからな。割に合わなくなった奴隷は廃棄奴隷っていって、主人から売られちまうのさ。当然、主人から主人と渡り歩くうちに奴隷の価値も下がっていくし、その待遇も下がっていく。だから奴隷たちは主人に見放されないよう仕事に邁進するって事だわな」


「なるほどなぁ。そっかぁ、確かにマスターの言う通りなのかもしれない、でも俺は俺なりに出来る事をやってみるよ」


「ああ、そっか、若いうちは何にでも精一杯出来るさ。思う存分やりな。応援してるぜ」


明日から仕事しよう。

俺は思う存分やるぞ。



酒、女、賭け事。

ハマりすぎれば身を持ち崩すといわれる2つに既にハマりつつある自分自身を理解しながらも、俺はもう元には戻れないだろうと感じていた。


次の日、俺はやっとこのファスの街の冒険者組合を訪れた。


冒険者にはランクがあって、Gランクから始まって上はAが一般てきだ。

SやSSランクってのがあるらしいという噂は聴くが、俺はまだAランクの人間にも会ったことが無い。


そんな中で俺のランクはDランクだ。

主に銀貨6から10枚ほどの依頼が多く。


ダンジョン中層の~を取ってきてくれ。

とか

オークジェネラルの肉の納品

とか

中級冒険者の依頼が主たる依頼だ。


大体、達成には3~4日の日数がかかる事が多く、1ヶ月休み無く働いて運が良ければ銀貨100枚ようは金貨1枚稼げるかなって感じだ。


そこから、食事代やら、宿屋の料金、装備の修繕費、ポーションなどの道具の費用、そういう日々かかる料金を差し引くと、月に大銅貨5枚貯められるだろう。

年に金貨6枚。

5年間がむしゃらに働けば彼女が買えるだろう。


ただ、これは本当に運が良い時だけだ。

怪我もせず依頼をこなし、運良く効率良い依頼にあたり、しかも疲れず休まず勤勉に禁欲的に働いてだ。

酒も飲まず、女も買わずにな。


これまでどおり、漫然と過ごして、ましてや酒を飲み、女を買って、休み休み働けば月に大銅貨1枚貯められるかも分からない。


俺の寿命が先か、彼女を買うのが先か、それすらも分からないな。


Aランクなんて言わない。

いつかはBランク。

とりあえず、Cランクだな。


Cランクにならなきゃお話にならない。

Cランクになればダンジョンの下層の依頼が来る。

下層にまで潜れれば、依頼プラス収集品の売買でかなり稼げるはずだ。


幸いにもこのファスの街の近くには複数のダンジョンがある。

俺はさっそくDランクの依頼票から手頃な依頼を物色した。


ファスの街の近隣のダンジョン情報も冒険者組合で教えてもらった。

ダンジョンは、まったくの異次元で、ダンジョンの外が砂漠だろうとダンジョンの中は水のダンジョンだったり、地域の気候や生態とはまったく関係しないダンジョンも多い。

俺は、死霊術師としてどのダンジョンの依頼が一番効率が良いか考える。


古代遺跡: かつて栄えた文明の遺跡がダンジョン化した場所。機械や魔法の仕掛けが多く、それらによって作られたモンスターが襲ってくる。階層数は10階で、最深部には巨大なゴーレムが待ち構えている。


古代遺跡という名前に惹かれる。こういう場所にはめっちゃ古い霊魂がいたりして、現代では喪失した話が聞けたりする。まぁ大体が今はもう無い国同士の戦いの話だったり、自慢話だったりするんだけどな。

機械とか魔法の仕掛けが多いという説明もなんとなくトラップが多そうな説明で、盗賊などの職業がパーティーメンバーにいないとトラップで死ねそうだ。


森の迷宮: 森の中にある自然のダンジョン。木や草や花などの植物が生い茂り、それらに宿った精霊や妖精がモンスターとして現れる。階層数は15階で、最深部には森の女王と呼ばれる美しい妖精がいる。


美しい妖精が見たい。綺麗で空気が良さそう。死霊と精霊なんて親戚みたいなもんだろうし、ちょっと死霊術師としては行ってみると勉強になる部分も多いかもしれない。


火山洞窟: 火山の中にあるダンジョン。溶岩や火山弾などの危険が多く、炎や岩石に関係したモンスターが出現する。階層数は20階で、最深部には火山の主と呼ばれるドラゴンがいる。

火山弾、ドラゴン凶悪なワードが説明に混じっている。絶対に行きたくない。死ねそう。死霊術師にも相性が凄く悪そう。


水晶塔: 空に浮かぶ水晶でできたダンジョン。光や音や色などの現象が不規則に変化し、それらに影響されたモンスターが出現する。階層数は25階で、最深部には水晶の王と呼ばれる魔法生物がいる。

ぜんぜん、どんなモンスターが出てくるのか想像がつかない。なんとなく固くて無機質なモンスターが出てきそうで、ここも死霊術師としては相性が悪そうだ。ダンジョンとしては綺麗なんだろうけどさ。



というわけで、古代遺跡か森の迷宮の2択だな。

まずは、その2箇所に絞って、依頼を物色する事にする。


いきなり中層まで行くなんて馬鹿な真似はしない。

まずはEランクとかの依頼を見て、Dランクでも良さそうな依頼があれば受けてみようと思う。


それと、今日は依頼を受けたら不動産屋にも行く予定だ。

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