モノジオン

「なんであんたが、説明する必要がある。あんたは全く関係ないだろ」


 小雪は大きな瞳をもっと広げて驚いた顔をした。


「今言ったじゃないか、医者と患者だって。

 俺の患者なんだから俺の言うこと聞きな。」


 小雪は継途を馬鹿にするように、おどけた言い方で笑ってみせた。


「はっ?関係なっ「おいっ!!先生に条件つけるなんてどういう了見だよ!クソ医者!」

              …うるせぇ」


「お前さんたちは、本当に"人"みたいだな。お前たちはれっきとしたバケモンなのにね」


「あぁん!?なんっつたいまぁ!ぶっ潰すぞ!」


 小雪ははっと鼻をならし、挑発するように笑った。


 ムカついた親夜は、自身の髪ゴムをスルリと取っり"パチンっ"と小雪に向かってゴム拳銃を撃った。


「うわっ!やめろよ!本当にお前はヤボったいな!」スカッ


「(普段はただのゴムのくせに、使い方によって髪ゴムですら凶器になるのか。)」

 小雪はそう思った。


 いらない発見である。


「へっ!!止めてほしけりゃあ止めてみろよ!やぶ医者!!」


 親夜はなれた手付きで、ポケットから髪ゴムを出してパンパンっと勢いよく撃っていった。


「おい!!俺は今赤ん坊なんだぞ!!丁重にしろ!親夜!!!」


「すんません!!」パンッパンッ


「とりあえず髪ゴムを置け!!」


「はい!」パン


 大きな声で返事をしたと共に、親夜は一発撃ってピタッと止まった。


「はぁ…最初から無駄な争いをするな。配慮を覚えろ…ど阿呆」


 親夜は、継途の叱りをにこやかに聞き入れた。


「ふへへ」


 親夜にとって継途に叱られる事は辛いこと厳しいことであったが、今は逆に嬉しく感じていた。


 今まで自身よりも大きく、頼もしかった師は自分よりも一回り二回りも小さくなって此方を見ている。


 親夜にとって、現在の状況が可笑しくて仕方がなかったのである。


「なにを笑っているんだ…俺はお前を叱っているんだからな。決っっっして褒めていない。」


 継途は、親夜を憐れむように眉をひそめる。


「はぁ…お前は本当に昔から勿体ない奴だな。まったく。



 おい…医者、説明しろよ。


 お前もなんかあんだろ、俺が起きてからずっと最悪って感じな顔してる。


 訳ありの奴なんていくらでもいるが、うちの弟子が世話になったよしみだからな。


 話くらいなら聞いてやる。」


「…こいつが、上から目線なのはお前さんのせいなんだろーね。」

「あぁん?!」

「おい、話し聞かねーぞ」


「すまんって!


 気を取り直して話そーぜ。

 まず最初に俺の自己紹介からだな。


 俺は小雪。名字は秘密。

 ここで闇医者やってる。


 今回、お前さんの治療を受けたのは協力して欲しいことがあるから


 それと、お前のマブダチに大金つかまされたから」


「だから俺から金取らなかったのか!あんた!」

「そーだよ(うるせえな)」


「…(なんで悠が俺を助けるようなことをする。公私混同するような柄でもないだろう。


 もし俺が生きてるとバレたら、あいつも危ういだろうに)」


 継途は唇を噛み締めて窓を見た。


 まるで苦虫でも噛んだようなその表情に、空気の読めない二人ですら眉を下げた。


「あー…千両悠がお前を助けた件だが、俺も深くは知らんからな。


 マブダチだとか、情が沸いたとかそんな理由じゃねーの?


 あんま気にすんなよ…それよりもお前さんは現状に目を向けな」



「そーっスよ!先生、今は赤さんなんスから!


 どーしましょー!取り敢えず俺のとこ来ます?」


「はぁ?…嫌だけど


 お前んちごみ屋敷じゃん。」


 親夜は心外とでも言いたそうな顔で継途を見た。


「そこんところは大丈夫だよ。俺が面倒見てやるから。」


 赤ん坊の世話も慣れてるしね~と腕組みしながら煙草をふかす小雪。


「会ったばかりだが、お前がそんなすぐに手を貸すような奴には俺は見えん。


 要求はなんだ。」


 小雪は煙をふぅと煙を吐いて、目線をゆっくり継途に合わせた。


 そして紙の束をベットにポンッとおいてこう言った。


「…こいつらを殺す手伝いをしてくれ。」


「なんだこれ?…殺人鬼集団…O《えん》」


 継途は目を見開いて冷や汗が出た。

 頭の中でチリチリと嫌な予感がちりばめられた。


「うわっ!先生?大丈夫すか?!顔面が赤裸々ですよ!!!」


「蒼白だろ…


 多分あんたが、想像した通りの奴だぜ。

 継途さんよ…


 時間がかかってもいい、頼んだぜ。」


「いいよ…俺にとっても好都合だから。



 "契約成立"だね。よろしく頼むよ。保護者」

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ピンキー×シークレット すもも @meronpans3201

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