モノローグ3~きっかける



「めーでーめーでー?




 聞こえるかいーーーー?おーーーい?!」


 めーでーめーでーと、一人の男は繰り返し、ベットの上の男に問いかける。


「うるさいぞ!…お前本当に医者か?!」


 ベット近くの椅子に座って、コーラを飲みながらもう一人の男はそういった。


「それに、先生が起きないって言ったのはお前だろ。その証拠に半年も眠ったままだ。


 そんな邪な起こし方じゃなくてちゃんとした起こし方してくれよ!」


「よこしまって…、言葉の意味分かってんの?俺は純潔全うな天才医師だけど????患者の目の前でコーラ飲まないから??」


 二人はぎゃあぎゃあとお互いを罵り合う。


「そ·れ·に·だ!!こいつはもう体の機能がほぼ壊れてるんだよ!起きる確率はお前に隕石落ちるくらいしかないって言ってんだろ!」


「先生は起きるんだよ!!強いから!!」


「夢見んな!!こいつを起こしたいなら代わりの身体もってこい!!


 記憶繋げて、新しい人生無理やりスタートさせてやるよ!!」


 

 医者は椅子に座って目を横にやった。



 横にあるベットには身体に管と包帯だらけの大男。



 はぁっと深くため息を吐いたあと、医者は半べそをかく少年にいった。


「お前…急にこんな危険な状態の奴持ってくるし、無料で治療しろとかいうしとんでもねえよな。


俺が優しくて良かったな??」


 ぐすんぐすんと泣く殺し屋の少年は、きっと睨みながら医者をみた。


「あんたにしか頼めないんだ…。明日には簡単な生きた人間捕まえてくるから…先生を治してくれよ!!…治せるんだろ?!


 金は、出世払いにしてくれていいから!」


「お前本当に図々しいなぁ…。分かっちゃいたがめんどくせぇ。


別に今回はお前が金払う必要ねぇから、取り敢えず静まれ。


お前さんは声がでかいんだ。」



「くそ医者っ!!ありがとなっ!!」ギュー


「引っ付くな。ひっぱたくぞ。」ベシッ


「いっっだー!!!叩いてるし!!」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



〈せっ…い…せ…。!〉


〈先生!!!!!〉


 継途は誰かに呼ばれている気がした。 


 彼は、暖かい繭に包まれるような感覚のなかそんな音をはじめて認知した。“先生”という言葉に耳が馴染んでくる。


 かんーーー!!かんっー!!


 ひどく耳に残る金属音が鳴り響いている。


 永い眠りを起こすアラーム…酷く残って気分が悪くなるような音…鋭い金属音に継途は不快感を覚えた。


「先生っ!!!起きて!!!」カンーー!!カンカンカン!!!


「(もう少し眠りたい。)」



「せんせいーー!!!はなさんがぁーー!!まってますよお!!」


「(…華ちゃん…待ってる…俺を…好き…)」


 カンカンカンカン!!!


 白銀継途はとても単純だった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「んっぁう…」


「あっ!!!先生っ!!先生が目をぉぉ!!!小雪!!ヴヴ…ありがどよぉぉ…!!!」


「俺にも先生をつけろよ。くそがき」


「小雪ヤブ医者先生!」ベシッ「いでっ!」


 暖かい日差しの中、継途にとって見覚えのある顔と見知らぬ顔がいた。


 一人は愛弟子の親夜だ。手にはお玉とフライパンを所持している。


 騒音の犯人は恐らくこいつだろう。



 いつもの継途なら龍のごとく怒るが、永い眠りから覚めたばかりの継途には安心感が襲っていた。


「んっ…お前…親夜か?俺はここはどこだ?…華は、、??」


「先生…ぅぅ…」


 ズビーッと鼻をならし涙を溜める親夜


「先生!俺…千両さんから連絡来て…急いで向かったら先生死にかけで…!!急いでここにかつぎ込んだんですよ!?


 それでえっとえっと…えっと…せっ…先生が意識なくして…おれ…やっとの思いで、治すのに1年はぁってこいつにいわれて、


 ううぅ、それから2年も経ってて…うっぅ!よかっだぁぁあー!!」


 涙が滝のように流れている。親夜の顔面は鼻水と涙でぐしゃぐしゃできもちわるい。


「2年も経っちまったのか…世話かけたな」


「先生ぃ~!!もっとかけてください!!」


「…ふっ」


 継途の口角は自然に上がっていた


 そんな二人の会話を遮るように、話を振る男がいた。

「それで、だ。白銀さん。」


 雪と火山灰が混ざったようななんともいえない髪色をした、極端に顔がいい医者は言った。


「あんたはもう白銀継途じゃないんよな。」



「…はぁ?…あんた何いってんだ?」


「お前さんが生きてんのは、他の人間の脳にあんたの記憶を埋め込んだからで…それはあんたの身体じゃねえんだ。



 今のお前さんは、喋る摩訶不思議な赤ん坊ってところだろうよ」


 男は徐にたばこを吸い始め、わっはっはと笑った。な


 部屋に立ち込める煙は子供の身体によくないだろう。

 換気のために窓を一気に空けたのは親夜だった


「小雪ヤブ医者先生!あんた、先生は今子供なんだぞ!!ジェドウ喫煙だ!!」


「くそがきが!!受動喫煙とか一丁前にいおうとすんな!!言えてねぇんだよっばーか!」


「じゅっ…?動喫煙?…知ってたしな!残念だったな!」


「…おれが赤ん坊…?」


 部家の中に、残ったものは煙草の匂いと混沌とカオスだろう。


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