第13話 温泉旅

 泥棒猫の美優が殺されてしまった。夏美はしばらくは硬直していたが、「キャハハハ!」と笑った。悪いことするから罰が当たったんだ。夏美は死神に感謝した。


『榊田クリニック』で、榊田裕二は優れた医師として知られる病院長である。彼は患者のために全力を尽くし、チームを鼓舞しながら病院を統率している。

 2025年10月末、病院に大規模な火災が発生する。裕二は即座に緊急対応を指示し、患者やスタッフの安全を確保するために自らも火災現場に飛び込む勇気を持つ。

 火災の煙や瓦礫の中で、裕二は迅速な判断力と経験を活かし、被害者の救助を続ける。彼は自己犠牲の精神で、困難な状況の中での医療を実践し続ける。

 その中で、裕二は親しい患者である高齢の女性、松本さんを救出するために懸命に努力する。彼は自ら危険な場所まで進み、松本さんを救い出すことに成功する。

 火災が収束し、病院が復興することで、裕二は地域の人々から感謝と尊敬を受ける。彼の率いる病院は再び活気づき、地域の人々にとって頼もしい存在となる。


 そんな裕二に暗雲が立ち込める。病院に警視庁捜査一課の松田透まつだとおる二岡源太におかげんたというコンビがやって来た。松田はメガネに七三分けのインテリで、二岡は革ジャンにツーブロックの野生派だった。

 革張りチェアでアールグレイティーを飲んでいた裕二に松田が尋ねた。

「田代美優さんとお付き合いされていますよね?」

 こういうときに嘘を吐いたら後々面倒になる。

「えっ、ええ……」

「田代さんが殺されたことご存知ですか?」と、二岡。

「えっ!?マジっすか!?」

「11月1日午後10時から2日の午前5時頃、どこで何をされてましたか?」と、二岡。

「急に言われても。ちょっと考える時間をください」

「分かりました」と、松田。

 裕二は記憶の糸を辿り寄せた。

「あ〜その夜なら錦糸町の『バタフライ』って店で飲んでました」


 2人は夜になるのを待ち、錦糸町にやって来た。

 駅南口の江東橋は、ラブホテル街やキャバクラ街、性風俗街、場外馬券場などからなる東京23区東部最大の歓楽街である。一方、駅北口の錦糸や太平では、大型商業施設に加えオフィスビルやコンサートホール、タワーマンションなどが集う再開発都市となっており、駅を挟んで治安や雰囲気が大きく異なっている。

 柔らかな灯りが満ちる一室。キラキラと輝くカウンターには、美しい女性たちが姿を現す。彼女たちこそが、このキャバクラの魅力的な存在だ。


 客席に座る男性たちは、楽しい時間を求めてやってきた。彼らは高揚した雰囲気でドリンクを注文し、美しいホステスとの会話を楽しむ。笑い声や歓声が広がり、心地よい騒がしさが漂っている。


 音楽のリズムに合わせて、ホステスたちはエレガントかつ魅惑的に舞い踊る。彼女たちの華麗な身のこなしや笑顔に、客たちは魅了される。キャバクラはまさに、夢と現実の境界を揺らす場所だ。


 鮮やかなカラードレスに身を包んだホステスたちは、おしゃべりながらも細やかな気配りを忘れず、客をもてなす。彼女たちの優雅な振る舞いと温かい笑顔によって、客たちは日常の喧騒を忘れ、特別なひとときを楽しむことができる。


 そして、キャバクラには独特の人間ドラマが存在する。客たちは、仕事の悩みや恋愛の悩みを打ち明け、ホステスたちから的確なアドバイスを受ける。人生の相談相手や心の支えとなる存在としての役割も果たしているのだ。


「二岡はこういう店に来たことはあるのか?」

「僕はこういった遊びはしないから……松田君は?」

「コロナ禍になってからはすっかり足が遠のいたけど、その前は週一で通ってたよ」

 二岡たちはボーイに裕二のアリバイを確認した。

 ボーイは防犯カメラをチェックしてくれた。

「確かにその方なら1日の夜にお越しになられてますね。アヤカとハルカという娘を買っています」


 夏美は息抜きに群馬県にある伊香保温泉に足を伸ばした。

 伊香保温泉の温泉街に到着した夏美は、湯治の効果に興味を持ちながらも、まずは温泉宿でのんびりと過ごすことにした。温泉に浸かりながら、彼女は自分がスパイになったときの事を思い出していた。スパイになったきっかけは緒方との出会いだ。ホテルでのセックスの後、ひったりくりに遭遇した。犯人は黒い目出し帽を被った男だった。夏美は男を必死に追いかけ、上段突き、アゴ打ち、回し打ちを喰らわせてノックアウトした。夏美は5歳から18歳のときまで空手を習っていた。

「よかったらウチに来ないか?」

 緒方は警察庁警備局の水木って刑事が独自で設立したスパイ機関『Mole《モール》』のメンバーだった。Moleは英語でモグラを意味する。


 急傾斜地に作られた石段の両側に、温泉旅館、みやげ物屋、遊技場(射的・弓道)、飲食店などが軒を連ねている。365段の石段は温泉街のシンボルであり、この界隈は石段街と呼ばれる。石段の下には黄金の湯の源泉が流れ、小間口と呼ばれる引湯口から各旅館に分湯されている。石段の上には伊香保神社が存在する。


 石段上の源泉周りは整備されており、源泉が湧出する様子を見ることができる。また石段から源泉までの遊歩道の途中に飲泉所も存在する。源泉の傍には「伊香保露天風呂」が、石段の途中には共同浴場「石段の湯」が存在する。


 温泉街と近くの物聞山にある上ノ山公園を結ぶロープウェイ(伊香保ロープウェイ)が存在する。


 温泉街の周辺には榛名山や、水沢うどんで有名な水沢観音などが存在する。

 宿の周りを散策するうちに、夏美は地元の人々とのふれあいに出会う。彼らは温かく迎え入れ、伊香保温泉にまつわるエピソードや歴史的な背景を教えてくれる。夏美は彼らの話を通じて、温泉文化や人々の生活に深く触れることで、自身の視野を広げていく。


 さらに、夏美は温泉地の周辺を巡る観光地や名所にも訪れる。美しい自然に囲まれた景色や、歴史的な建造物に触れることで、彼女の心はますます豊かな感動を受けるようになる。


 夏美は旅を通じて、癒しやリラックスだけでなく、自分自身と向き合い成長していくものを見つけていく。人々との出会いや新たな体験を通じて、彼女は自分の内面に眠る可能性や純粋な喜びを再発見するのだ。




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