第9話 嵐の復讐 ~あずさ、サレ妻の逆襲~

【シーン1:ショッピングモール内のカフェ】


あずさ(悲しげな表情で):哲也、なぜ私を裏切ったの?


哲也(無関心そうに):君とはもう終わりだと思っていた。新しい人生を始めたかったんだ。


あずさ(怒りを抑えながら):それが私にとっては人生を狂わされたことよ!


【シーン2:あずさの友人・紗希の家】


あずさ(決意を込めて):紗希、私はどうすれば哲也を倒せる?


紗希(考えながら):冷静になって計画を立てましょう。哲也は会社の社長ですから、証拠を集める必要があります。


あずさ(頷きながら):そうだね、証拠がなければ何も始まらないわ。


【シーン3:あずさと紗希が哲也の行動を調査する場面】


あずさ(ラップトップを使いながら):哲也が浮気相手との連絡を取り合っている証拠を見つけたわ。


紗希(興奮気味に):すごい!それを使って哲也を追い込めるわね。


【シーン4:弁護士事務所内】


弁護士(厳粛な口調で):哲也、あなたが浮気をし、会社の利益を損ねていたことは証拠で明らかです。


哲也(怒りを抑えながら):嘘だ、そんなことはない!


弁護士:しかし、この証拠によってあなたの犯罪行為が明らかになりました。求められるのは、あなたに対する罰です。


【シーン5:哲也が有罪判決を受け、法廷を出てくる場面】


あずさ(満足そうな表情で):哲也、これで私の復讐は成功したわ。


哲也(怒りを込めて):お前が私を追い詰めたんだな。許さないぞ!


【最終シーン:あずさが充実した表情で笑顔を浮かべながら景色を眺める場面】


 あずさ:哲也、私の復讐は果たされたわ。これからは自分の人生を取り戻す時が来たのね。


 2025年11月

 あずさから夫の悪行を聞かされた夏美は、あずさを主人公にした小説を執筆した。夏美は『笹野出版』が応募する官能小説賞にトライしたら最優秀賞を手にした。男性っぽく整形し、名を綾田剛志あやだつよしと変えたので警察に捕まる心配はなかった。

 が、問題はあった。男性をゲット出来ないことだ。40歳を越え、体のあちこちにもガタが来ている。友人が子宮頸がんになったりした。子供もほしいけど、体力的にキツイな……。全て、夫のせいだ!夏美は不意に裕二に憎悪を抱いた。

 テレビをつけたら、若狭って男性が日光の華厳の滝で自殺を図ったニュースをやっていた。

 夏美にはあまり関係ないので、チャンネルを回したら『ちびまる子ちゃん』がやっていた。実は若狭は、裕二の友人の吉田の妻、雅子の愛人だったのだ。吉田は雅子が浮気をしていることを突き止めた。嫉妬に駆られた吉田は、友人の裕二に『元気のある人間に抗うつ剤を処方したら自殺する傾向があるんだ』とアドバイスをもらった。吉田は何としてでも若狭に報復をしたかった。

 吉田は若狭を訴えることにしていたので、会う機会はあった。都内の喫茶店で肩を落としながら、『金、かなり搾り取られるんでしょうね、ハァ〜』と溜め息を吐いていたので、抗うつ剤を渡した。吉田は偶然にも、『笹野出版』をリストラされうつ病を患っていた。

 同じチャンネルのニュースを吉田は自宅の食堂で見ていた。インスタントラーメンを啜っていたときだった。

「薬の効き目があったかな……」

 吉田は穴の開いたグレーの靴下にうんざりした。

 また、金がかかる。腰の痛みはピークに来ていた。最寄りの整体院で昨夜、マッサージをしてもらったがあまり効き目がなかった。雅子が出ていってしまったので食生活は偏っていた。

 若狭が死んだこともあり、吉田のメンタルは上昇傾向にあった。ここ数年、下ばかり見てきた。人間、落ち込むと上を向かなくなる。上を向いたら電気にカメムシがくっついていた。昨夜だったら、イライラしていて叩き潰していたかも知れない。が、今夜は気分がいいから、窓から逃がしてやった。

 これ以上、抗うつ剤を飲んだら首を吊ってしまうかも知れない。

 

『嵐の復讐 ~あずさ、サレ妻の逆襲~』を哲也は書店に入って立ち読みした。綾田剛志ってのは、もしかしたら、あずさかも知れないと哲也は疑った。

 給料も入ったことだから少しは余裕が出来た。2000円を払って、本を買った。自宅近くの喫茶店でモカを飲みながら小説を読んだ。小説の中の哲也は墨田工業って会社の社長だ。きっと、モチーフは墨田署だ。

 不倫をする相手は新人社員の多田戸千紗ただとちさ。戸田千郷のアナグラムだ。哲也と千紗の不倫を知ったあずさは、最初は許そうとする。あずさも実は不倫をしていたのだ。相手は石本という、あずさの学生時代の友人だ。

 もしかしたら、リアルあずさも不倫をしていたかも知れない。哲也はあずさをビルの屋上から突き落とす妄想をした。元の生活に戻り、京都に旅行に行ったり、流産して亡くなってしまった子供の墓参りに行ったり穏やかな生活が続くが、青天の霹靂は起きた。あずさが子宮筋腫になり入院をする。その隙に哲也は再び、千紗と不倫をする。前回は公園でのキスまでだったが、今回はラブホに行き肉体関係を持ってしまう。ラブホに入る瞬間をあずさの勤務するコンビニの後輩、紗希に目撃されてしまう。

 残酷な現実を後輩から突きつけられたあずさは号泣し、うつ病に陥る。心療内科に通う、うつ友の美奈子から『抗うつ薬ってものすごく副作用が怖いの、そんなもんに頼るより裏切った相手を殺すことを妄想した方が余程いいわよ』とアドバイスをもらう。美奈子はアパレルメーカーのお局様からパワハラをされてうつ病になった。あずさは夫を包丁で刺し殺したり、青酸カリで毒殺したり、挙げ句の果てにはバズーカ砲でタクシーに乗り込む、夫と千紗を派手に殺す。次第に食事を摂れるまでに回復し、紗希からのアドバイスで法律を徹底的に勉強し、哲也に真実の鉄槌を下す。

 法廷での哲也に対するあずさの発言は実に辛辣だった。

『アンタみたいなクズ、チンカス以下よ!』

 怒りのあまりに本をテーブルに叩きつけた。

 他の客がジロジロ哲也を見ている。

「あの、お客様、他のお客様にご迷惑ですので……」

「うるせーな! こんな店二度と来ねーよ!」

 勘定を払い、喫茶店を出てあずさの実家へと急いだ。あずさの実家は奥多摩にある。2年前は異常なほどの猛暑で、11月になっても夏日が続いたが今年は既に雪が降っている。夏場には蛍が現れる、ジブリ作品に出てきそうな山奥にやって来た。列車を降り、改札を抜けて霧に覆われた暗い道を歩いた。しばらくすると、『ひいらぎ』という表札が見えてきた。インターホンを押した、この家にはモニターがなかった。不用心なあずさの両親が神様に思えた。ガラガラと引き戸が開いて「は〜い?」と、あずさが顔を覗かせた。

 あずさが死体でも目撃したような表情になる。

「なっ、何のよう!?」

「石本ってのは誰だ!?」

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る