薬の為に。
影神
貧困
国が貧しいと。
人間も、貧しくなる。
これは、避けようの無い事だ。
子供の鳴き声が響く。
「ごめんねぇ、
お腹減ったよね。」
子供は極度の栄養失調だった。
骨と、皮だけ。
私も大して変わらないが。
普通の子供よりも痩せ細って居た。
この子の父親が誰かは分からない。
別に望んだ訳じゃなかった。
拒む私に。
男は乱暴をした。
この国では、それが当たり前だった。
そうして子供を育てている母親が沢山居た。
私も。その中のひとりだった。
薬は高くて買えない。
ちゃんとした病院なんて行ける訳もない。
食べ物には虫がたかり。
お風呂になんかは入れない。
それでも、何とか生きて来た。
乱暴されて、そのまま亡くなる友達。
病気になって、そのまま亡くなる家族。
それが。この国では、当たり前だった。
食べる物も、飲む物も無く。
一生懸命に働く。
何時間働いても。
その日に一食。
食べられるか、食べられないか。
子供に、薬をあげたい。
子供に、ご飯を食べさせてあげたい。
だから。
私は、一生懸命働いた。
ある日。
職場の人に元気の出る薬を貰った。
その人はその薬のおかげでか。
いつも、元気だった。
私は度々注意される事が多かった。
疲れて、元気等出なかったからだ。
薬なんて高くて買えないのに。
その優しい人は、私にタダでくれた。
私は神様を信じた事は無かったが。
この時初めて、神様を信じた。
それからは、仕事でも褒められる事が多くなった。
お金も少し、多く稼げた。
週末には一食。お肉が食べられた。
しかし、どうしてだか分からないが。
不思議と、急に、身体が重くなった。
何だか辛くなり。
気が、落ちて来た。
そんな私に職場の人はまた。
元気の出る薬をくれた。
でも、次からはお金が必要らしい。
その薬は3日分の給料だった。
普通の薬よりは、全然安かった。
何しろ普通の薬は給料の全部を使っても。
貰えないのだ。
私はその元気の出る薬を飲んで。
一生懸命に働いた。
お客さんはとても喜んでくれた。
しばらくすると。
全然お腹も空かなくなるし。
身体の痛みすらも、感じなくなった。
私は一生懸命働いた。
子供は元気に成長している。
まだまだ骨と皮だけだけど。
よく、笑う様になった。
私は子供には幸せになって欲しい。
その為にはお金が必要だ。
私が一生懸命働かなければ。
元気の出る薬は少しずつ高くなった。
それでも私は。
その薬からは離れる事は出来なかった。
何故なら。
私が一生懸命働かなければならないからだ。
私の、子供の為に。
私の、
薬の為に。 影神 @kagegami
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