第14話 私は子供が嫌いだ
俺は、子供が嫌いだ。
子供を見ただけで虫酸が走る――と自認していたのだが、ある時、それはちょっと違うんじゃないかと気付いた。
正確には、子供は子供でも、俺が嫌いな子供は中学生限定なのだ。
俺の気に障るクソガキムーブをかましてくるのが大抵中学生で、だから俺は中学生が嫌いで、それを俺は、自分が子供全般を嫌いだと誤解していたのだ。
つまりもっと正確にいうなら、俺が嫌いなのは中学生がやりがちなクソガキムーブだということになる。
思えば俺は、自分が中学生の頃から中学生が嫌いだった。
自分がクソガキに煽られがちなキャラだったというのもあるし、いまでいう共感性羞恥もあったんだろう――というわけで、人生の数十年間にわたってクソガキムーブを憎み続けた結果、俺はクソガキムーブの予感がしただけで身体が反応するようになってしまっていた。
そしていま、異世界で。
俺の目の前に、クソガキがいる。
上級プレイヤーとばかり連むようになってから、
「『ぶっ殺してやる』……『ぶっ殺してやる』だってさ。くすくす。強い言葉は自分を弱く見せるんだよ~。おじさん、いい年してそんなことも知らないのぉ? あ、そうか。だからザコなんだね。ザーコザーコ」
こいつは久々の、クソにクソとクソとクソとクソを重ねたくらいのクソガキだった。
見ただけで身体が震えたのも、むべなるかなである。
「ではぁ。ザコおじさんに『来い』って言われたから行っちゃいま~す」
俺が腰を上げると同時に、クソガキの姿が消えた。
真っ直ぐ喉の下を狙ってきた拳を、俺は『
受けた――のだが。
「ふごへぇっ!」
ぶざまに血を吐きながら吹っ飛んで、木の根元に叩きつけられていた。
一撃で、HPが0になった。
ということは、死んだ。
声がした。
「し、死んじゃったぁ。あのおじさん、死んじゃったじゃったじゃないのぉ。どうするのよぉ……セシリアが泣いちゃうじゃないのよぉ」
子供の声――クソガキじゃない方の子供だろう。
それに答える声は、クソガキのクソガキ声だ。
「え~、いいじゃん。あいつがザコなのが悪いんだしぃ。それに、セシリアが泣くとこ見てみたいしい」
本当にクソだな、このガキ。
だがクソガキでも、ステータスは高い。
クソガキのステータスが、これ。
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イミル
龍(ルビー種成体)
脅威レベル:SSS+
スキル:存在Lv6、龍激Lv4、龍癒Lv3、土魔法Lv7、人化Lv5
ドロップアイテム:無し
称号:******(スキルにより隠蔽)
-----------------------------
クソガキじゃない方が、これだった。
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ユミル
龍(アズライト種成体)
脅威レベル:SSS
スキル:存在Lv6、龍激Lv2、龍癒Lv5、水魔法Lv8、人化Lv5
ドロップアイテム:無し
称号:******(スキルにより隠蔽)
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脅威レベルSSS+というのは、さすがに今の俺では敵わないらしい。
少なくとも、さっきまでの俺では。
「やっぱり、256じゃ無理か」
「ふぇえええ。死んでなかったのぉ? おじさん、立ち上がったよぉ。良かったのよぉ~」
うん。
クソガキじゃない方――ユミルは良い子。
「ザコ…………っ!!」
一方クソガキはといえば、俺が2,3歩も歩かないうちに仕掛けてきた。
今度は飛び蹴りだ。
空中から斧の様につま先を振り下ろし、頭蓋骨のつなぎ目を狙ってきた。
今度も『
「え、えぇ……イミルが、叩かれちゃったぁ」
しかし……
「128でも、まだ無理か」
「わけの分かんないこと言って!! 余裕見せてるつもり!?」
一合するごとに防御する手足は折れ、最後は腹を蹴りぬかれ。
またもHPは0。
俺は死んだ。
砕けた脊椎が背中を破って飛んでく感触は、なかなかエグいものでした。
「ザコ……ザコ……ザコ……ザコ!!」
疲れよりは興奮からなんだろう。
クソガキが、息を荒くしている。
そんなクソガキを横目に、
「さて、64ではどうかな?」
再び、俺は立ち上がったのだった。
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